Factory Network Asia Group
タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。
中国での家電の需要が一服するなか、食器洗い乾燥機(食洗機)の販売台数が急速に伸びている。中商産業研究院によると、2016年の中国における食洗機の販売額は、前年比104.8%増の19億千万元(約336億6千万円)だった。17年は8月時点で24億2千万元(約411億4千万円)に達し、すでに前年の販売実績を上回っている。同研究院は、17年通年の販売台数は109万7千台に達し、販売額は47億6千万元(809億2千万円)を実現すると予測する。前年比140%増という驚異的な成長率だ。(注:本文中のグラフ・図版や写真は、その該当するところを一度クリックすると「image」画面が出ますので、さらにそれをもう一度クリックすると、大きく鮮明なものをみることができます)
中国では、食洗機の普及率はかなり低い。同研究院によると、世界で最も普及しているのは米国で、80%近くに達する。以下ドイツ、フランス、スペインと続き、日本でも30%近い。ところが中国は1%に過ぎないのだ。
中国の富裕層やある程度収入の高い層では、家政婦を雇うのが一般的なため、食器を自分で洗う習慣がなく、食洗機を必要としない。ところが中間層では、毎日家政婦を雇う余裕はない。しかも共働きである家庭が多いために、家事に割ける時間も十分ではない。さらに可処分所得も上昇しているため、中間層にとって食洗機は、手の届く存在になってきている。そうした事情が、需要拡大を後押ししているのかもしれない。
日本では撤退するメーカーも多く、近年では、食洗機の販売は伸び悩んでいる。日本でこれ以上普及しない要因のひとつには、厨房(ちゅうぼう)の小ささがある。住宅自体が狭いためだが、食洗機を置くスペースがとれないのだ。一方、厨房の広い中国であれば、将来的には日本並みに普及しても不思議ではない。そうなると、市場はいまの30倍まで拡大する計算になり、その規模は600億元(約1兆200億円)にまで達する。食洗機は、家電業界における次の成長エンジンになる可能性を秘めているといっても過言ではない。
◆急増するプレイヤー
急成長を受け、食洗機を製造するプレイヤーの数も急激に増えている。同研究院によると、17年8月時点でその数はすでに43社を数えるが、この1年以内に17社が新たに参入しているという。製品数も167から229に増えている。
そのなかで有力なのは、方太(FOTILE)、シーメンス、美的、ハイアール(海爾)、パナソニックといったところが挙げられる。黎明期では海外メーカーが牽引していたが、ほかの家電製品がそうであった様に、国内メーカーが徐々に力をつけてきている。『土巴兔新聞』(5月4日付)によると、15年の全販売台数に占める国内メーカーの割合は23%だったが、16年には43%まで拡大している。
食洗機には、キッチンに組み込むビルトイン型と卓上型がある。『日本経済新聞』(6月22日付)によると、1960年に日本で販売を開始したパナソニックは、中国では16年度から卓上型の販売を開始しているが、18年度からはビルトイン型の販売も開始するという。
各社が本腰を入れる食洗機市場に待っているのはバラ色の未来か。あるいは、過剰な値下げ合戦による地獄か。その行方に注目したい。
※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ2017年12月号より転載しています。
http://www.factorynetasia.com/magazines/
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