迎洋一郎(むかえ・よういちろう)
1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。
標準化とその遵守が定着したら、次は改善活動に入る。この改善の方向性を明確にするとともに、改善効果を測る手段として、私は以下の2つの指標を用いている
①付加価値生産性
②工数生産性
今回は、会社経営者にまず取り入れていただきたい付加価値生産性について述べていきたい。
◆付加価値生産性とは?
付加価値生産性とは、基本的に会社にとって最も重要な経営資源である“人”の効率性に関わる指標である。具体的には、総売り上げから材料費、部品費、外注加工費を引いたものを付加価値売り上げと位置づける。
材料費などについては、製造部門で管理しにくい部分が大きいのが変動費であり、会社内で付加価値を付与した売り上げと認められないため控除する。この付加価値売り上げを人件費で割ったものを付加価値生産性と呼ぶ。
すなわち、付加価値生産性とは、投資した人件費に対する労働生産性を表すのである。経営者は、この付加価値生産性を毎月改善していくことを目指さなければならない。
◆付加価値生産性管理表
(注)前年と比べた改善率についてこのケースでは、年末の3カ月(ここでは2012年10、11、12月)平均を使用している。前年末の12月度データを用いることもできるが、現実には棚卸しが3カ月に1回行われるとか、祝・休日が多かったり少なかったりして固定費比率が変動するため、3カ月平均がより正確であると判断したためである。年末データを使用するか、3カ月平均を使用するかは会社それぞれの事情に合わせれば良いと考える。
◆付加価値生産性を改善するには?
付加価値生産性の改善は、以下の3つの手法でなされる。
①売り上げが一定で人件費が減少(人員が減少)
②人件費が一定(人員が一定)で売り上げが増加
③売り上げ・人件費が一定で、材料費ほか変動費が減少
①②を達成していくために、次回以降、具体的な工場の改善策について言及していくが、ここで敢えて申し上げておきたいのは、売り上げが減少していく中で人件費が減少せず、付加価値生産性が悪化していくケースである。比較的賃金の安いタイや中国などでは、人件費圧縮に対する意識が緩慢となり、こうした付加価値生産の低下を招く機会が多い。初心に立ち返り人件費については十分注目していただきたい。
また、タイや中国では、日給制労働者も多く、残業代の定給上乗せ比率も高い。正規労働者・派遣労働者の適正人員を常に見直すとともに、残業代の適正金額についても検討すべきである。
◆材料費・部品費などの変動費にも注目
付加価値生産性は材料費や部品費等変動費にも左右される。具体的には以下のようなケースが起こると付加価値生産性が悪化する。
・不良品が発生し材料費が上昇
・金型の段取り替えがうまくいかず、製品歩留まりが悪化
・部品の受取個数や金額の間違い
このように材料費などの変動費も付加価値生産性に影響を与えるため、前掲の「付加価値生産管理表」においてはこれらの変動費も個別に棒グラフにして毎月の変動に注目することをお勧めしたい。
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