東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
タイでは労働者保護法によって労働者の権利が守られており、安易な解雇は労働裁判所での提訴につながることがあります。今回は、解雇する従業員に対して必要な事前の注意と警告についてご説明します。
◆裁判時のリスクヘッジを図っておく
会社は、雇用する従業員が就業規則などに違反した場合、「口頭注意(口頭注意時の記録書)」や「警告書」を出すのが一般的ですが、会社によっては必ず以下の順序としなければならないと捉えているケースもあるようです。
①口頭による警告
②書面による警告(1回目、2回目)
③停職(そのまま④に行くこともあり)
④解雇
口頭注意は最初の処分として位置付けられますが、その様態は公式なものでも、非公式なものであっても構いません。ただし、就業規則に定められている場合には、雇用者はより厳格に就業規則に定められた順序に沿った対応が求められます。
微細な違反に対して、書面警告から始まった場合、もしくは、口頭注意の証拠が直接証拠も間接証拠もなく全く証明できない場合には、裁判となった際に、裁判所が雇用者側が不当な対応をしたという心証を強め、不利に働く可能性があります。
裁判での不利な状況を避けるためには、以下のように書面警告の内容や交付方法などを工夫することで状況を改善できる場合があります。
・最初は緩やかな内容の文面にする
・面談の中で交付し口頭で十分に説明する
・書面警告の回数を増やす
・間隔を十分に設けて従業員が態度を改める時間を与える、など
結論としては、口頭注意については、もし省略されていても、その後、数回の書面警告と懲戒解雇通知を交付する手続きが重要視されるため、十分な証拠書類などがそろっていれば解雇までの適切な手続きが踏まれていると認定され、口頭注意の不備は特に重要ではありません。
また、口頭注意の証拠がないことは確かに不利に働くといえますが、その割合は全体の懲戒解雇手続きの流れからすると小さいため、その後に続く、書面警告手続きには十分に注力することが重要です。
繰り返しになりますが、タイでは企業が労働裁判に直面するケースが多くなっています。自社の就業規則を正しく理解し、書面警告の内容や交付方法などを工夫することで裁判時のリスクヘッジを図っておくことが重要です。
そして、何かトラブルがありましたらいつでも弊社にご相談ください。
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