引地達也(ひきち・たつや)
法定外シャローム大学学長、一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
◆呼吸で人生は変わる
「ストレスリリースの方法」の講義をヨガのインストラクターとともに構成する作業をしていて実感するのは、「すべては呼吸から始まる」ということである。呼吸を意識して腹式でゆっくりとすってはくことを繰り返すだけで体はリラックスする。それまでの悩みや不安などアタマやココロにあったもやもやを忘れてしまうから効果は大きい。呼吸一つで目の前の風景はかわり、人生も変わる、のも大げさではないのかもしれない。
「誰もが抱えているストレス」なのだからと放置して自然に治るのを待つのもよいが、呼吸法を教えられて考えたのは、私たちが使う日本語の言語的な性格上、呼吸は胸式となり、知らずと発生するストレスは必然であり、それを調整するにはやはりうまく腹式呼吸を活用するのが、よい方法なのは間違いない。
◆母音で終わる日本語
日本語の特徴は圧倒的に母音で終わる言葉が多いことである。母音とはア、イ、ウ、エ、オであり、発音は胸式呼吸で語感は穏やかで柔らかなものになり、話し方も同様に多く息を吐く必要がない穏やかでゆっくりとした話し方になる。
一方の英語は子音優位の言語で、基礎的な語の8割は子音で終わる。発音は腹式呼吸で破裂音や摩擦音があり、語感は強く鋭いものになり、話し方も強く鋭くなる。結果的に日本語は自己主張を避け、人との和を重んずる話し方に適し、英語は自己主張を外部にはっきり伝えるのに適していることにつながる(平出正嗣・千葉大教育学部『発音とリズム』千葉大学教育学部紀要等を参照)。
つまり、日本語を日常的に使う場合は、意識的に腹式呼吸をする必要があるといえる。
◆胸式呼吸ゆえに
日本語と連動する胸式呼吸は、胸を大きく広げての呼吸が難しいため、浅い呼吸になる傾向がある。吸った空気が肺の中に入り難いために、肺の中に酸素が行き届き難くなるということで、二酸化炭素などが肺の中に残るため血行が悪くなることがある。
加えて自律神経の交感神経を刺激し、ストレスや緊張が高まるために自律神経のバランスを壊してしまうのである。しかしながら交感神経の調整は集中力を高めるのにも寄与するから、日常の活動で交感神経が活発に働くことは重要だ。
一方の腹式呼吸は、横隔膜を大きく動かして呼吸を行うから深い呼吸となる。胸式とは違い多くの酸素を肺に送り込み、肺の中の二酸化炭素などが残り難くなり、血行が促進されるのである。
◆英語のカラオケが効果的?
結果的に胸式に比べ腹式は横隔膜の動きが副交感神経を刺激してストレスや緊張から開放される効果がある。内臓活動が活発するから消化活動も盛んになり、リンパ球が増えることで免疫力も高まる。
だから、腹式呼吸を意識することがストレスリリースで推奨されるわけだが、自分の使っている言語から呼吸を意識することから始めるのは新しいかもしれない。
日本語は落ち着いた言葉ではあるが、リズムには弱い。やはり腹式の呼吸でリズムが伴えば必然的にオペラにもミュージカルにも適してくるのが英語である。とはいえ、呼吸も言語もストレスも生きていることと同義と言えるほど身近な存在だから、私たちはそれぞれに意識的に理解しながら、付き合っていきたい。
それが結果的にストレスリリースにつながるのだと思う。
■学びで君が花開く! 特別支援が必要な方の学びの場
シャローム大学校
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■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
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