引地達也(ひきち・たつや)
特別支援が必要な方の学びの場、シャローム大学校学長、一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
◆学びの発展機会
昨年度のプレ学習期間を経て4月から始まった「法定外シャローム大学」だが、先日文部科学省から名称の変更を打診され、5月から「シャローム大学校」として周知していくことになった。
特別支援が必要な人のための学びの場、として学生への配慮を前提にしつつ「大学教育」水準の「教授」「研究」「社会貢献」を目指すために、「法定外」を明記しつつ「大学」を名乗ってきたが、厳密にいえば「大学」とは学校教育法に基づき文部科学省が認可した機関でなければならず、文科省は我々が取り組んでいる障がい者のための教育の必要性は十分理解し評価した上で、「大学表記を避けてほしい」との意向だった。
それは積極的な意味であらたな「学びの場」を文科省と創意工夫のもとに発展できる機会と考えている。
◆専門技術習得のイメージ
「法定外」を前置きした上での「大学」は、2年前の見解では文科省としては否定していなかった。今回も否定はしないまでも、やはり法律に則ることを優先させる行政機関としては、グレイゾーンは是正したいとの思いもあるのだろう。
あらためて考えれば、これまで特別支援学校の教員や親御さんからは「法定外とはどのような意味なのでしょうか」という問い合わせが多かったので、法定外がなくなり、「シャローム大学校」ですっきりしたかもしれない。
この大学校とは、防衛大学校、自治大学校、職業訓練大学校などさまざまに存在はしているものの、設置に関する法的な位置づけはない。一般的には各省庁が幹部養成や専門の技術の習得のために設置した教育訓練機関のイメージであろう。防衛大学校の場合は防衛省が設置した幹部候補生の養成機関であり、ここの場合は防衛省に入省後に入学するために身分は国家公務員だ。
◆3つの形での教育
それでは、シャローム大学校とは何かと問われた場合に、純粋な「学びたい」という思いを受けた特別の教育機関であり、そのために必要な「特別な支援」を考える専門機関としての役割が問われているのだと考えている。
本欄でこれまで伝えてきた通り、シャローム大学校は三つの教育の形を提供している。それは、通学して集合学習もしくはゼミ方式の学習、時には面談を織り交ぜていく「通学型」、遠隔地をテレビ会議システムで結んで講義・授業を行う「遠隔型」、そして医療ケアの必要な方の自宅や医療機関に訪問して講義及び授業を行う「訪問型」である。
ここでいう特別支援とは当事者のニーズをくみ取りながら、適切な学びへの導きが行えること、の意味であるが、これは多様である。どんなに多様であっても学びたい意思があれば、その可能性を考えるのが、私たちの役割だと考えている。
◆当事者と作っていく
当事者のニーズは多様であるために、まずは第一段階で三つの型で多様性に対応しようとしたが、さらに当事者一人ひとりのニーズがあるから、最終的な「型」は当事者の個人ニーズに適合させた形となる。
多くの大学校は「型」を身に着け、その応用力を高める素地を作る訓練の場でもありそうだが、シャローム大学校は、既存の「型」から離れて、個人のニーズにどのように応えらえるかが、この学校の力量として最終的には評価されることになるだろう。
スタートして間もない時期に名称変更となってしまうが、これも注目されている表れだと考えれば気持ちがよい。依然として法的位置づけはないままだが、これは当事者とともに作っていくものだから、ここにも未来は希望であふれていると考えている。
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