引地達也(ひきち・たつや)
特別支援が必要な方の学びの場、シャローム大学校学長、一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
◆文科省・東大との共催で
今年度の文部科学省事業である「共生社会コンファレンス」は全国6ブロック地区に分け、共生社会に向けた学びの可能性を広く伝え、自治体への理解や広く市民に知ってもらうのが目的としている。
各地区で実施団体が中心となって文部科学省の共催として行う事業であり、それぞれの地域の特色と採択団体のカラーが反映されているから、多様なプログラムとなっている。私は関東・甲信越ブロックの実施団体「一般財団法人福祉教育支援協会」として文科省とともに東京大学教育学研究科を共催にして行う予定だ。
研究や実践、当事者を融合させた上で先駆的な取り組みを紹介しながら、その啓蒙的な効果と担い手を増やすことを目指そうとする中で、私たちが向かうべき方向を確認しながら、関係者の思いを集め、形にする難しさを痛感しながらもだんだんと形が見えてきた。
◆名古屋からスタート
各地の日程と場所はすでに決定済み<https://www.kyoseishakai-conference.com>で、日程順では、12月1日に東海・北陸ブロックとして「障害者の学びの場づくりフォーラムIN東海・北陸」(実施団体・NPO法人学習障害児・者の教育と自立の保障をすすめる会)、12月5日に東北ブロックの「共に学び、生きる共生社会コンファレンス 東北ブロック」(実施団体・秋田県教育委員会)、12月21日に「〇(まる)のつどい~共に考えよう!障害理解の促進、学びの場の担い手の育成、学びの場づくり~」(実施団体・愛媛大学)、来年になって1月31日に近畿・中国ブロックの「共に学び、生きる共生社会コンファレンス~障害理解の促進、障害者の学びの場の拡大を目指して~」(実施団体・兵庫県教育委員会)、そして2月14日に関東甲信越ブロックがあり、最後は2月22日の北海道ブロック「ともに学ぶ共生社会を目指して~社会教育の実践を通じたコミュニティの可能性~」が予定されている。
私たちが進める関東・甲信越ブロックのテーマは「共に学び、生きる共生社会コンファレンス~障害理解の促進、障害者の学びの場の担い手の育成、学びの場の拡大に向けて~」としており、「理解促進」「担い手育成」「場の拡大」を明確に打ち出して丁寧に議論していこうという思いが込められ、それは開催趣旨文の目的部分に反映されている。
「第一に、障害者の参加を妨げている社会的障壁や、その解消のための方法について理解を深める(障害理解の促進)。第二に、障害の有無にかかわらず必要な学びが得られる環境を整えるための工夫や考え方の共有を図る(障害者の学びの場の担い手の育成)。第三に、障害者本人の経験やニーズが源泉となるような新しい学びあいの場と豊かな関係性を地域社会に創り出す取り組みを推進する(障害者の学びの場の拡大)」。これらの言葉を整理するのと同時にプログラム内容が連動するのは当然であり、その当然を効果的に実施するための議論を進めている。
◆当事者の来場を期待
会場は東京大学の本郷キャンパスで、共催として東大も加わることで、障がい者の学びで想起される課題に対して「すべて対応したい」という思いにかられ、結果的にこれまでの障がい者の学習に関する活動や社会運動を踏まえながら、現在の取組を後押しする文脈の中で、「社会教育」「『高等』教育」「重度障がい者向け教育」などの視点のほか、当事者性を意識しながら「『障害』の疑似体験ブース」「当事者研究」「ヒューマンライブラリー」も企画した。
さらに難しい議論は苦手な参加者向けには、現在シャローム大学校が地域で展開している「音楽とコミュニケーションのプログラム」を開催、東京大学内を散策する東大散策ツアーも盛り込んだ。
結果的に多種多様になったことで、運営側は少し冷や汗をかいている状態だ。とはいえ、冷や汗も「汗と涙」のうちで、その結晶として何らかの成果が出るはずだと確信している。
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