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追いつめられつつある? タイの日系企業
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第245回

7月 14日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

タイで活動する日系企業の業況感が芳しくない。私は半年に一度の割合で、タイに進出している日系企業の生きた景況感をこの「ニュース屋台村」でお伝えしている。私たちバンコック銀行では、在タイ日系企業5800企業のうち約4000社のお客様に日本人部員30人が日常的にコンタクトさせていただいている。こうしたお客様訪問で得た「生の情報」を、この「ニュース屋台村」で還元させていただいている。直近では2022年12月16日付(第231回「タイの街角経済-定点観測」)と、22年6月17日付(第220回「少しずつ活気を取り戻し始めた‐タイに戻って1週間」)に拙稿を掲載した。これらの記事を読み返してみても、タイの風景はこの1年でずいぶん変わってきたことがわかる。 記事全文>>

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「物価」について考える(その3)
『視点を磨き、視野を広げる』第68回

7月 03日 2023年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

日銀総裁が10年ぶりに交代して3カ月たった。日本の物価上昇率は3%台で推移しているが、海外インフレや円安の影響を受けたものである。そうした外的要因がなくなれば、デフレに逆戻りする可能性があると考えられ、日銀はデフレ脱却のめどがつくまで金融緩和策を維持するとしている。植田新総裁は、足元のインフレへの目配りと、異次元緩和の副作用への対応を進めながら、慢性デフレ脱却の道筋をつけるという難題に取り組まなければならない。

黒田前総裁は、「異次元」と呼ばれる大規模金融緩和を10年続けたが、物価目標2%を達成できなかった。その間に、日銀のバランスシートは膨れ上がり、市場のゆがみなどさまざまな副作用を残したのである。なぜこうした状態に陥ってしまったのか。ここから抜け出すことができるのか。それを知るためには、来た道をたどることから始めるしかなさそうだ。そこで本稿では、異次元緩和がなぜ始まったのか、失敗の原因は何かについて考えてみたい。 記事全文>>

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私たちの知らない「通信の世界」
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第244回

6月 30日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

1章 はじめに

2020年からの新型コロナウイルスの流行により、人々の生活環境は大きく変化した。仕事においてはウェブ会議やウェブ面談が盛んに行われ、プライベートでも映画館などの人の集まる場所への外出が制限されたため、サブスクリプションサービスやYouTubeなどでの動画視聴が増加。買い物はECサイトを用いて行い、飲み会ですら「Zoom飲み」と呼ばれるオンライン飲み会が誕生した。こうしたことができるようになったのも、ひとえに通信システムの急速な発達があったからである。

ところが私たちは「現代社会において重要な役割を担っている通信システム」がどのように機能しているのか十分に理解していない。今回は通信システムの歴史や仕組みを説明した上で、海底ケーブル、通信事業者、基地局ベンダーに焦点を置き、今後日本のメーカーがどのように通信システムにかかわっていくべきかを考えていきたい。 記事全文>>

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「物価」について考える(その2)
『視点を磨き、視野を広げる』第67回

5月 31日 2023年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、社会に大きなダメージを与えて経済活動を停滞させた。パンデミックとの3年にわたる戦いの後、WHO(世界保健機関)は今年5月に「緊急事態宣言」の終了を発表した。経済学者の渡辺努(東京大学大学院教授)は、パンデミックは「後遺症」を残し、それが現在の世界インフレの主原因であるという説を唱えている。(⇨①パンデミックの「3つの後遺症」)

WHOが「緊急事態宣言」を出したのは、2020年1月であった。同年3月には、パンデミックの影響による消費減少が景気後退を招くことを懸念したFRB(米連邦準備制度理事会=米国の中央銀行に相当)は、緊急利下げを行ってゼロ金利政策を導入した。金融を緩和して市中に大量の資金を供給することで景気悪化を防ぐことが目的であった。 記事全文>>

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少子化対策の財源は高齢者の負担を中心に
出生率に及ぼす効果に配慮を
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第66回

5月 17日 2023年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

oオフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

岸田政権が、異次元の少子化対策を掲げている。4月には「こども未来戦略会議」が発足し、財源に関する検討も始まった。

岸田文雄首相は、同会議で「世代や立場を超えた国民一人ひとりの理解と協力を欠くことはできない」と述べている。与党内には、社会保険料を財源に充てる案もあるという。

しかし、負担に関する世代間のバランスの議論なしに、少子化対策を論じることはできない。負担の在り方は、出生率の変動に直結するからだ。 記事全文>>

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金属資源の現状と資源メジャーと比較した日本の金属鉱山事業
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第241回

5月 12日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

人類の歴史を振り返ると、民族や国家の繁栄には鉱物資源が深く結び付いていることがわかる。紀元前17世紀から13世紀にかけてアナトリア(現在のトルコ)、メソポタミアで覇権を築いたヒッタイト王国。ヒッタイト人は製鉄技術を有し鉄器、特に鉄製車輪を擁した騎馬戦車を使って近隣諸国を制覇したのである。日本も決して蚊帳(かや)の外ではなかった。13世紀に中国などを旅行して「東方見聞録」を記したマルコポーロ。彼はその著書の中で日本のことを「黄金の国ジパング」と称した。当時金銀を豊富に採掘していた日本は西洋人にとって夢の国であったのであろう。その夢を追いかけて、コロンブスが豊富な銀鉱山を有する新大陸アメリカを発見したのも歴史の奇遇である。さらに日本では16世紀になると戦国時代を迎えるが、佐渡金山を持つ上杉謙信と甲斐金山を持つ武田信玄が覇権を競い合ったことからも鉱物資源の重要性がわかる。

ところが現在の日本にはほとんど鉱山が残っていない。文明開化・富国強兵の明治時代に開発された国内鉱山は経済合理性の下でその多くが閉鎖され、それとともに日本人の多くは鉱物資源の重要性を忘れつつあるように感じられる。欧米諸国は資源メジャーを通して鉱物資源の権益を保有。一方、中国は国策として資源保有国に技術・資金援助を行い、権益の拡大を図っている。今回は、こうした資源をめぐる世界各国の動きをデータを通して解説していきたい。 記事全文>>

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金融裏面史を疾走した男
国重惇史 破茶滅茶な生涯
『山田厚史の地球は丸くない』第237回

5月 05日 2023年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

40年余の付き合いがある国重惇史(くにしげ・あつし)が帰らぬ人になってひと月になる。「イトマン事件」を告発し、住友銀行を闇の勢力から護(まも)った金融界のヒーロー、と言えばかっこいいが、たびたびの「不倫」で出世や地位を棒に振った破茶滅茶な男だった。銀行員に収まりきれない熱血漢で、内部告発や大蔵省への工作など危ない橋を渡り、銀行を離れた後もネット証券、ネット銀行など先端分野で道を開いた。スキャンダルで家族から見放され、「進行性核上性麻痺(まひ)」という完治の見込みがない難病を患いながら、好きな女性に守られて4月4日、あの世に旅立った。 記事全文>>

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北海道の現状はあすの日本の縮図
人口減少が与える深刻な影響
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第240回

4月 28日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

新型コロナウイルスとはいったい何だったのであろうか?――。思わずそう感じてしまうほどコロナ禍前のような日常生活が戻ってきた。かく言う私もこの4月1日にタイから一時帰国し、日本各地を出張で渡り歩いている。東京都心の人出の多さはコロナ禍前に戻った感を覚えるし、何よりも京都や奈良などの観光地は客でごった返している。修学旅行が復活し、学生の団体が見られるようになったのはうれしい。大型のスーツケースやいくつものリュックサックを抱えた西洋人の姿も目立つ。コロナ禍で移動できなかったうっぷんを、日本への旅行で一挙に解消しようとしているのであろうか? はたまた、円安で実現した「安い日本」を味わい尽くそうとしているのであろうか?

そんな外国人の姿を、桜もまだ開花していない、冬の名残をとどめる肌寒い4月初旬の北海道でも多く見かけた。ここでも人の流れは戻ってきていた。コロナ禍前の光景に戻ったように見える北海道。しかしコロナ禍の3年の間に確実に何かが変わったようである。深く静かに潜行して進む日本の高齢化と人口減少。4月初旬の北海道出張で感じた私の印象を述べてみたい。 記事全文>>

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「物価」について考える(その1)
『視点を磨き、視野を広げる』第66回

4月 24日 2023年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆本稿の狙い

今回のテーマは「物価」である。日本は1990年代後半からデフレ(物価下落)に苦しんできたが、突然インフレ(物価上昇)に見舞われた。世界全体でインフレが進行しており、日本もその影響を受けたことが直接の原因であるが、これでデフレから脱却したと考えて良いのだろうか。その問いに答えるためには――世界的なインフレの原因は何か、そもそも日本はなぜデフレになったのか――を明らかにする必要がある。

これらの疑問に対する答えを示してくれる本を見つけた。渡辺努(東京大学教授)の『物価とは何か』と『世界インフレの謎』である。渡辺は日本銀行出身の経済学者である。渡辺の恩師である根岸隆(東京大学名誉教授)は、学問を「ハードアカデミズム」と「ソフトアカデミズム」に分類して、前者は新しい知の創造や独創的な研究を目指し、後者は知の伝承や教育を目的とすると述べている(*注1)。根岸は、日本の大学は後者に偏っているが、国際的な学会で承認される「ハードアカデミズム」こそ日本に必要であると説く。根岸自身は、それを実践した日本有数の経済学者である。 記事全文>>

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名門企業いまや反社会的―原発の呪縛が解けない電力
『山田厚史の地球は丸くない』第236回

4月 21日 2023年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

ドイツで4月15日、すべての原子力発電が止まり「脱原発」が確認された。これから「廃炉処理」という長い後始末に取り組む。高濃度の放射能に汚染された原子炉の解体、核燃料廃棄物の処理など難題が待ち受けているが、動いている原発がなくなることは確実な前進である。人類が手を染めた「核エネルギー」との付き合い方を考える貴重な政策転換でもある。

ドイツの脱原発は、2011年3月の東京電力福島第一原発事故を教訓として、2013年に決まった。2022年末まで、となっていたが、ウクライナ戦争でロシアからの天然ガスの供給が途絶え、停止期間が4か月先延ばしされた。日本では「ドイツは原発を断ち切れない」といった指摘があったが、ドイツ政府は約束通り「停止」を実現させた。方向を定めたら、多少の調整はあっても、原則は変えないというドイツの一貫性を示したといえよう。 記事全文>>

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