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蘇る「東京圏転出入均衡目標」という名の亡霊―「デジタル田園都市国家構想」は大丈夫か
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第64 回

2月 08日 2023年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

oオフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

昨年(2022年)末、政府が「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を発表した。デジタルインフラの整備を前面に押し出しつつ、「地方に仕事をつくる」「人の流れをつくる」といったコンセプトは、従来の地方創生政策を引き継いでいる。

その中に「2027年度に東京圏転出入均衡(ネット転入超数ゼロ)を目指す」との目標がある。これは、地方創生を開始した14年に「20年までの均衡を目指す」として掲げられ、その後取り下げられた目標と同じである。

過去に達成できなかった目標を、理由の分析や反省なしに再び掲げ、財政資金を投入してよいものだろうか。「東京圏転出入均衡」は、日本の社会経済にとって本当に適切な目標か。 記事全文>>

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日経・紙媒体が消えた日
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第234回

2月 03日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

タイで長らく宅配されてきた日本経済新聞(日経)の紙媒体が、昨年12月31日をもって廃刊になった。日経は2006年9月からタイで現地印刷・宅配を始めたとのことで、私は16年以上、日経の紙媒体のお世話になってきたことになる。海外にいながら日本の情報を新聞で毎日得られることなど、昔は考えられないことだった。それだけに、この期に及んで、日経の紙媒体が廃刊になったことへのショックは大きい。年寄りの戯言(たわごと)になるが、35年に及ぶ海外生活をしてきた私が、情報収集に苦労してきた過去を振り返ってみよう。 記事全文>>

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『ハイパーインフレの悪夢』から学ぶ
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第233回

1月 20日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのが2020年の春。タイ政府によるロックダウンで外出できない私は、バンコクのアパートで所在なくテレビを見ていた。その時の番組名は覚えていないが、グーグルで検索してみると、20年4月4日NHKで放映された「緊急対談パンデミックが買える世界-歴史から何を学ぶか」という番組のようだ。イタリア在住の漫画家ヤマザキマリが出演していた記憶がある。この番組でヤマザキマリなど出演者たちが強く勧めていたのが、アルベール・カミュの『ペスト』(1947年)とジョヴァンニ・ボッカッチョの『デカメロン』(1348~1353年)を読んで感染症を知ることであった。 記事全文>>

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情報通信業はなぜこうも大都市特化型なのか~地域と付加価値(その3、完)
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第63 回

1月 16日 2023年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

oオフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

過去2度にわたり、市区町村別にみた産業別の従事者1人当たり付加価値額を確認してきた(第59回「全国2位は東京都境界未定地域 地域と付加価値(その1)~地方圏をリードする製造業、民間研究機関(2022年9月7日付)」、第62回「農林漁業、宿泊業で高付加価値を誇る市町村は?~地域と付加価値(その2)(2022年12月1日付)」)。

付加価値とは、企業や事業所の売り上げから原材料費や減価償却を差し引いたものをいい、この中から従業員の給与が支払われ、残りが利益となる。これを事業従事者数で割った「従事者1人当たりの付加価値額」(以下「1人当たり付加価値額」)が、いわゆる労働生産性だ。

最終回となる今回は、情報通信業、製造業の動向を取り上げたい。データは、いずれも2016年「経済センサス―活動調査」による。 記事全文>>

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防衛費増額とたばこ税増税
『国際派会計士の独り言』第42回

1月 04日 2023年 経済

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内村 治(うちむら・おさむ)

photoオーストラリアおよびアジアで大手国際会計事務所の日系サービス統括や、中国ファームで経営執行役などを含め30年近く幹部を務めた。現在は中国・深圳の会計事務所の顧問などを務めている。オーストラリア勅許会計士、「みんなの大学校」教員、外国人向け日本語教師。

安全保障関連3文書決定(2022年12月16日)とともに、それにかかわる防衛費総額に繋(つな)がる増税論議が国内を騒がせている。岸田政権は安全保障関連3文書を閣議決定し、今後10年間の「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」(現・防衛計画の大綱)などを決めた。また、2023年度から5年間の防衛費を総額で「43兆円程度」とし、19~23年度の5年間の総額と比して1.5倍以上の増額で、GDP(国内総生産)比では約1%から2%に増額するとしている。この財源として毎年4兆円規模が必要だとしていて、かなりの部分は歳出削減や一般会計の決算剰余金が充てられるが、不足すると予想される1兆円強の財源について、岸田首相は「安定的な財源で確保すべきであると考えた」と述べ、増税に理解を求めた。

これを受けて自民、公明両党は23年度の与党税制改正大綱を発表。この中で増税の財源については法人税、復興特別所得税、たばこ税の三つの税目で1兆円強を捻出(ねんしゅつ)するとした。ただし、「拙速」とされる決定への不満が与党の一部からもあることから増税のタイミングについて与党でまだ結論が出ておらず、12月23日に閣議決定された税制改正大綱では「24年以降の適切な時期」との表現にとどまった。 記事全文>>

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黒田日銀の敗北
『山田厚史の地球は丸くない』第228回

12月 23日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

日銀は、長期金利の許容幅を1±0・25%だったのを1±0・5%に拡大することを決めた。新聞各紙は一面トップで「日銀が金融政策を修正」(朝日新聞)などと大きく報じたが、一般の人には、なんのことかさっぱりわからないのではないか。

この決定は、日本が「アベノミクス」と呼ばれた異形の経済運営に見切りをつけたことを意味する。

強いて言えば、覚醒剤患者が「ヤクをやめたい」と言い出したようなもので、このまま進めば身を引き裂く苦難が待ち構えている。「いつかはやめなければならなかったこと」(政府高官)ではあるが、再生への苦痛に政治家や人々は耐えられるだろうか。来る年は、その決意が問われるだろう。 記事全文>>

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日本企業のジョブ型雇用導入について:「リベラル能力主義」について考える(その7)
『視点を磨き、視野を広げる』第64回

12月 21日 2022年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに:本稿のねらい

今回は日本企業のジョブ型雇用導入について考えたい。日本経済新聞によると、上場および非上場有力企業813社のうちジョブ型雇用が約2割あるという(*注1)。この数字は想像していたより多い。確かに最近の新聞を見ていると、ジョブ型雇用という見出しが目につく。

前稿で取り上げた『ジョブ型雇用社会とは何か』の著者である濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構労働政策研究所長)は、こうしたメディア報道を、記事の注目度を高めるために「ジョブ型」という言葉を使っており、「制度や中身の違いを本質的に理解していない」ものが少なくないとして批判的に論じている。ただ、濱口が言いたいのは、ジョブ型を正しく理解すべきだということだと思う。濱口は「ジョブ型」の名付け親であるが、欧米の雇用システムを「ジョブ型」と総称しているのであり、米国と欧州では同じジョブ型でも違いがある。したがって日本流のジョブ型があっても良いのかもしれない。また濱口自身、「日本企業がこれまでの賃金処遇制度に問題意識を持ち、新たな人事制度を取り入れようとしていること自体は理解できる」と述べて企業の雇用改革への努力に一定の評価をしている。 記事全文>>

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農林漁業、宿泊業で高付加価値を誇る市町村は?~地域と付加価値(その2、全3回)
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第62回

12月 19日 2022年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

oオフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

9月7日付の第159回(全国2位は東京都境界未定地域 地域と付加価値〈その1、全3回〉-地方圏をリードする製造業、民間研究機関)で、従事者1人当たり付加価値額の高い市区町村を確認した。2016年「経済センサスー活動調査」に基づく結果である。

付加価値とは、企業や事業所の売り上げから原材料費や減価償却を差し引いたものをいい、この中から従業員の給与が支払われ、残りが利益となる。これを事業従事者数で割った「従事者1人当たりの付加価値」が、いわゆる労働生産性だ。

以下、産業別にみた市区町村別の従事者1人当たり付加価値額(以下「1人当たり付加価値額」)をみてみよう。 記事全文>>

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タイの街角経済―定点観測
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第231回

12月 16日 2022年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住24年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

私たちは事実を把握するうえで、数値を用いた科学に多くを頼っている。自分自身が独断と偏見に陥らないためにも、客観的な数値に頼ることは極めて重要である。あらゆることに数値を集め、空間軸と時間軸で比較を行うことにより「相関関係」を見つける。その相関関係を基に論理を用いる「因果関係」に展開する。ギリシャ哲学以来、人間はこうした手法で科学的に真実の解明に努めてきた。しかし、科学的手法の問題点は時間がかかることである。計測可能な数字がまとめられるのは、数日から数週間かかる。ましてや経済指標などは計測する基礎データが複雑でありかつ観測点も多いものは、計数が発表されるには半年かかるものもある。

ところが現実の商売を行う上では、こうした数字を待っていると商機を失う。商売を行う上では、実際の肌感覚も極めて重要である。多くの方から「生きた情報」をうかがい、それを整理することによって現状を把握し、商売に生かす。銀行員にはこうした「生きた情報」を収集できる幅広いネットワークがある。幸いにもコロナの弱毒化と医療体制の整備が進んだため、このタイでも日常生活がかなり戻ってきた。最近ではバンコック銀行日系企業部の部員による顧客訪問もかなり活発に行われている。ニュース屋台村の拙稿2022年2月18日付第214回「コロナ禍のタイの風景―定点観測」および22年6月17日付第220回「少しずつ活気を取り戻し始めた―タイに戻って1週間」に引き続き、定点観測しているタイの街角経済の実態を報告したい。 記事全文>>

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物価目標「2%」の見直しはなぜ必要なのか~米国の現実を直視せよ
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第61回

12月 12日 2022年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

oオフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

1990年代以降、物価目標政策(インフレ・ターゲティング)を採用する国が増え、2010年代には多くの中央銀行が2%の物価目標を掲げるようになった。「物価目標2%はグローバルスタンダード」と言われる所以(ゆえん)である。

日本銀行も、2013年1月にコア消費者物価の前年比2%を目標とする「物価安定の目標」を導入した。さらに同年4月の異次元緩和では、「(2%を)安定的に持続するために必要な時点まで(これを)継続する」とした。

その後9年半が過ぎたが、今も異次元緩和は続いている。物価目標政策は日本だけがうまく機能していないかのように言われるが、そうではない。最近の世界的な物価高騰は、同政策が海外でも期待したようには機能していないことの表れである。 記事全文>>

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