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「生きる」ことにつながる生涯学習という視点
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第253回

3月 27日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆4つの事業

文部科学省の2022年度「地域連携による障害者の生涯学習機会の拡大促進」事業で行われた「重度障害者の学習支援の展開と地域と指定管理業者による障害者の生涯学習の場づくりの研究事業」は最終報告会を行い、成果報告書を発表した。

最終報告会では、連携協議会委員やプログラムの参加者、参加した当事者の保護者から意見をいただき、それらを来年度の計画に盛り込み、さらに発展させていきたいとまとめた。今年度の文科省による「要支援者向けの生涯学習」の委託研究の取り組みは、以下の四つの柱で実施した。

「重度障がい者向け講義『おんがくでつながろう』の実践」「遠隔講義『メディア論』の展開」「指定管理業者との学びの場づくり研究」「重度障がい当事者との企画と実践によるオープンキャンパスの開催」。どの事業でも「インクルーシブ」を基本に関わり合うことでの感動が生まれた、と私自身はまた一歩何かが進んだと感じている。 記事全文>>

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法定雇用率アップで新しい就労支援の第一歩を踏み出す
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第252回

3月 20日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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2.7%へ引き上げ

政府が障がい者の法定雇用率を二段階に分けて上げることを決めたことで、関係する企業や支援機関など障がい者雇用の周辺では何かザワザワした雰囲気になっている印象がある。法定雇用率が2.7%になるということは38人以上を雇用している企業にその雇用義務が発生することになるから、「そろそろ対応しなくてはいけない」との思いと不安の声を該当する企業の幾人からか聞いた。

障がい者が企業で働くことで産業面での共生社会を目指す取り組みはマクロでみれば誰もがハッピーなキーワードだが、企業の担当者がいざ障がい者雇用に直面すると、未知への対応に気苦労は多いようだ。その企業側の「苦労」を取り除けば、障がい者雇用は社会に広がり、定着させることになるのだろうから、企業に焦点を当てた支援活動は必須だ。

この「企業への支援」も念頭に先日、専門家や研究者が集まってこれからの就労支援について話し合う機会を設け、次の支援の形に向けて少しずつ言葉を探し、つなげ始めている作業を開始した。 記事全文>>

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廻るデータサービス
『みんなで機械学習』第17回

3月 15日 2023年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o株式会社ふぇの代表取締役。独自に考案した機械学習法、フェノラーニングのビジネス展開を模索している。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長、Pfizer Global R&D, Clinical Technologies, Director。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

◆制作ノート

英国の経済学者エルンスト・シューマッハー(1911-1977年)の「スモール イズ ビューティフル」における中間技術の提案を、「みんなの機械学習」として再考するため、「スモール ランダムパターンズ アー ビューティフル」という拙稿に挑戦している。前稿では、経済データと健康データのデータサイエンスについて考えてみた。前稿をふり返りながら、本稿への足掛かりを探して、「制作ノート」としている。本稿は途中の画像以降で、制作ノートの要点も、画像以降にまとめている。拙稿全体のゴールは単純だ。古典的なモノの価値を問う経済学から、最近のコト(サービスなど)の意味を重要視する経済学への移行を前提として、未来のデータサイエンスが、人類の文明論的な変革をもたらす夢物語を、少なくともディストピアとしないために頑張っているつもりだ。そのゴールにおいては、意味が認知される以前の「データ」そのものが、みんなの機械学習によって、「言語」とは別の、文明の道具になるだろう。 記事全文>>

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東日本大震災-芥川賞受賞『荒野の家族』に見る現実
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第251回

3月 13日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆語りえないもの

東日本大震災を題材にした小説『荒地の家族』(新潮社)が第168回芥川賞を受賞した。作家の佐藤厚志さんは仙台市出身でJR仙台駅前の丸善仙台アエル店に勤務する書店員であることが話題になった。私も故郷に戻った先日、せっかく買うのならば、とこの書店で同書を購入した。

その行動は、おそらく私の中で震災に関することは一歩踏み込んできた中で、この購入もその心の動きにつながったのだろう。そして、本書の内容も丁寧で精緻(せいち)な表現で描かれたフィクションを、心象風景という誰の中にもあるその震災への「思い」を表現したノンフィクションと受け止めた。

そう言い切ってしまうのは、私自身がその意識の中でこの本を捉えたからだ。震災を語ることで風化を防止するという考えは大切だが、語れないもの、語りえないものがある。それが何か、この小説は静かに、そして力強く表現している。 記事全文>>

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原発被災 12年目の現実
復興事業あっても暮らしの復興なし
『山田厚史の地球は丸くない』第233回

3月 10日 2023年 社会

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

3・11東京電力福島第一原発事故から12年。原発事故の被災地は今、どうなっているのか。福島県双葉郡の三つの自治体を訪ねた。取材のきっかけは、『原子力村中枢部での体験から10年の葛藤で掴んだ事故原因』(かもがわ出版、2021年8月)という本である。著者の北村俊郎さんは元日本原子力発電の理事・社長室長であり、原発事故被災者でもある。東京電力の原子力担当副社長だった武黒一郎氏や、その後任の武藤栄・元副社長らは一緒に原子力業界を担った仲間である。

北村さんは、双葉郡富岡町に晩年の棲家(すみか)を定めた。穏やかな気候、緑濃い環境が気に入り、退職後は妻と2人で暮らし、3月11日の東日本大震災に遭遇した。7キロ離れた福島第一原発で爆発が起こり、隣の河内村に避難を強いられたが、ここも危なくなり郡山市に逃げ、「原発難民」となった。自宅は帰還困難地域に指定され、戻ることはできない。

「原子力村」の中枢で働きながら、被災者になった北村さんは10年をかけて何が原発事故の原因だったのか考え続けた。その成果がこの本にまとめられている。

今月5日、北村さんを避難先の福島県郡山市に訪ねた。「12年が経ったが、原発被災地は取り残されたままだ」と言う北村さんの言葉に、北村さんが残してきた自宅やその一帯をこの目で見てみたい、と思った。 記事全文>>

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東日本大震災-13回忌から考える2つの伝承施設
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第250回

3月 06日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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13回忌の節目

2023年3月11日で東日本大震災から12年になる。仏教の考え方では干支が一巡したことにちなむ13回忌にあたる。この13回忌は7回忌とともに区切りとされ、法要は7回忌や13回忌をもって終了することも多い。その13回忌で東日本大震災がどう語られるか、またこれを境に忘れられていくのか、大きな節目かもしれない。

先日、来訪した被災地ではいまだに困難な日常や死者への悲しみや行方不明者への哀れみが日常的に存在しているから、忘れるわけはないのだろう。被災地とそのほかの土地とのギャップは必然であろうが、それは大きくなるばかり。先日、「忘れてはならない」地域の思いを形にした二つの施設、宮城県気仙沼市の「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」と宮城県南三陸町の「南三陸町東日本大震災伝承館・南三陸311メモリアル」を訪れ、距離を超えて震災の教訓を共有し、そこから得た叡智(えいち)を形にする難しさを考えさせられた。やはり距離を埋めるのは「対話」しかない。 記事全文>>

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手ごわい「リスキリング」と「アンラーン」
『四方八方異論の矛先-屋台村軒先余聞』第4回

3月 01日 2023年 社会

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元記者M(もときしゃ・エム)

元新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。座右の銘は「壮志凌雲」。新型コロナ禍に伴う約3年の在宅勤務を経て、2023年1月に定年退職。現在の日課は3年以上続けている15キロ前後のウォーキング。いまのところ、歩くのが三度の飯とほぼ同じくらい好き。歩きながら四季の移ろいを体感しつつ、沿道の草木を撮影して「ニュース屋台村」のフェイスブックに載せている。

「キッシー」「スガチャン」「アベチャン」「アッソー」……。わが家族の専用のLINEには時折、歴代の首相の名前がこんな呼び名で登場する。愛称というより、明らかに侮蔑(ぶべつ)した言い方で、その先鞭(せんべん)をつけたのは、毎回最初に書く私である。いまだにスマホは持たず、愛用している4G機能付きのガラケーでもLINEは使えるが、いつも自宅備え付けのノートパソコンで打ち込んでいる。ほぼ毎日何かしら書いているが、自宅にいる時しか見ないし、見られない。そのせいもあって、毎日概ね朝方、新聞2紙とネットニュースをチェックした私の一方的な思いの吐露や主張に終わることが多く、ほかの3人からは「既読」のマークは付いても、私が提示した話題に乗ってくることはまずない。ところが最近、「リスキリング」と「アンラーン」について書いたところ、産休中だった長女が即座に鋭く反応し、久しぶりにやりとりが盛り上がった。 記事全文>>

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中間組織のデータサイエンス
『みんなで機械学習』第16回

2月 20日 2023年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o株式会社ふぇの代表取締役。独自に考案した機械学習法、フェノラーニングのビジネス展開を模索している。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長、Pfizer Global R&D, Clinical Technologies, Director。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

◆制作ノート

データサイエンスを教える大学が人気だそうだ。経済データや健康データを活用して、現場で問題解決をする人材が不足している。オン・ザ・ジョブ・トレーニングやリスキリングでは、人材の質・量・学習時間が、データニーズの増大に追いつかないのだろう。行政や企業のリーダーたちも、データサイエンスの学習意欲はありそうだ。データサイエンスは金融業界で成功したので、儲かりそうに思えるのかもしれない。しかし、現在のデータサイエンスは、データに関するサイエンス(少なくとも自然科学)ではない。従って、本論考が探求している「データにとっての技術と自然」について、現在のデータサイエンスでは明確な答えはない。現在のデータサイエンスでも、現在の問題の一部は解決できるかもしれないけれども、問題が山積みにされるスピードにはとても追いつけない。「データにとっての技術と自然」を深く思索して、機械(コンピューター)とともに、共生・共進化する未来を実現すること、それが本論考の目標であって、ひとびとの行動が変容するほど、単純で実行可能な、生活レベルで役に立つデータの利活用を見いだしたい。 記事全文>>

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重度障がいの学生からの「勇気はありますか?」の問いかけ
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第249回

2月 06日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆手のひらからの言葉

埼玉県郊外の静かな住宅街で私はその学生に初めて対面した。オンラインでは何人かの参加者の一人として画面越しでの関係性は始まっていたが、直接会うのは心が躍る。

その感動にひたりながら、私は言葉と表情でその心の高鳴りを伝え、彼は自宅のベッドの上で管をつながれたからだの目のまばたきと、微動する指で母親の手のひらに「言葉」を伝え、母親が言葉にして私に伝えた。

特別支援学校高等部を3月に卒業する彼に、今後一緒に「みんなの大学校」で学ぶかの問いかけに、彼は母親の手のひらからこう言葉を発した。

「先生には勇気がありますか?」。

重度障がい者に向けて「学び」を一緒という思いで対話してきた中で、初めて私に求められた「勇気」に心が震えた。「一緒に」と呼びかけながら、彼・彼女らが勇気を持って挑んだ学びには「勇気」があった。その発見に、私は彼に「もちろんあるよ」と言いながら、その行動の在り方を考えている。 記事全文>>

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障がい者の生涯学習を担う人たちへのスイッチオン
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第248回

2月 01日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆地域で、一緒に

障がい者の生涯学習の推進に向けて千葉県の公民館職員らを対象とした「障害者の学び」研修会で、「地域で学ぶ 一緒に学ぶ 障害者と学ぶ」と題した講演を行った。講演前には文部科学省から行政説明として障がい者の生涯学習に取り組む政策や全国における実施の現状や事例、今後の方針などが伝えられたから、私はその背景を前提にして、現場で働く方々により実践的な内容を具体的に話す機会となった。

文科省による障がい者の生涯学習の委託研究を当初から行ってきた者として、成功や失敗を繰り返しながら、有効だと思える手法をお伝えするのが私の役割。各地の公民館で、その地域でのインクルーシブな学びは成立するという自信を得てほしいとの切実な思いで臨んだが、講演をして思うのは、インクルーシブな場づくりや内容の検討、具体的な言葉の選び方など、やることは多岐にわたるのだが、それは「やろう」という道筋の中で自然発生的に備わってくる知見であるとつくづく思う。だから、まず「やろう」から始まるのだ。 記事全文>>

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