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医療的ケア者への生涯学習に誰が向き合うのか
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第222回

12月 20日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆変わらない現状

 「第2回医療的ケア児者の生涯学習を推進するフォーラム」が10月29日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターを会場にズーム参加とのハイブリットで行われた。総勢約250人の参加者は昨年より増加しており、医療的ケア者の学びの世界と可能性が少しずつ広がっているのを実感したが、保護者や関係者の痛切な思いは、国の制度がない現状の改善を促している現状は変わらないままだ。

このフォーラムは、この「学びの場が与えられていない」状況の改善に向けて昨年から各地の声を結び付け、それを発信していこうと、みんなの大学校と重度障害者・生涯学習ネットワークが主催となり、文部科学省の「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」の一環として、文科省の障害者の生涯学習を推進する政策に位置づけようとの狙いで行われている。

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芥川賞「貝に続く場所にて」の鼓動から生まれるもの
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第221回

12月 13日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆ためらいが文字に

 2011年3月11日に起きた東日本大震災でボランティアとして支援活動をしてから、震災を題材にする小説や映画、ドラマなどを私は避けてきたような気がする。メディア研究の一環として、それを分析的に捉えようとしたこともあるものの、自ら率先して向き合ってはこなかった。

それは演出される映像や表現された言葉と、そこにあった現実とに大きな乖離(かいり)があること、を突き付けられるのが怖いからである。いまだに波にさらわれ海から戻らない人がいる中で、なおさらに言葉は無意味となる。

震災から10年でもその感覚は変わらないものの、その言葉にするためらいを文学にしたのが、第165回芥川賞受賞作『貝に続く場所にて』(石沢麻依著)だと解釈した。ためらいにも確かな鼓動があり、それが伝わる。

震災時、仙台の内陸で被災した作者は「海も原発も関わらなかった場所にいたこと。そのことが、あの日の記憶と自分の繋がりを、どこかで見失わせている」と書くその感覚に強く私も反応する。

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医療モデル偏重と障がい者支援の地域格差是正を東京から
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第220回

12月 09日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆優先される判断

 障がい者が社会で生きやすくするために、日本社会は「医療モデル」から「社会モデル」に移行するべきだとの議論は数十年続いている。障がいによる生きにくさを医療による治療だけに頼るのではなく、その障がいを社会が規定していることを自覚し、社会に住まうソーシャルワーカーはじめ市民が「障がい」をなくすという考えである。

しかしコロナ下にあって、医療偏重の社会構造は助長されそうな雰囲気もある。それは医療の権限が大きいからで、障がい者支援で言えば、支援の認定が医師の判断が優先される構図があるから。最近の共同通信の調査では、20歳未満の障がい児がいる保護者に支給される「特別児童扶養手当」をめぐり、医師の判断が優先され地域で基準が違うことから地域格差も生まれていることが分かった。

障がい者支援を都道府県や複数の自治体で実践している立場の私にとっては、その自治体によってのバラバラがもはや常識とはなっているが、それで不利益を被る当事者に「仕方ないね」と泣き寝入りするのは、終わりにしたいと思う。

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砂漠緑化の地球内科
『週末農夫の剰余所与論』第22回

11月 24日 2021年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o 株式会社エルデータサイエンス代表取締役。元ファイザーグローバルR&Dシニアディレクター。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

農園は来春の準備が始まった。前回『週末農夫の剰余所与論』第21回に晩秋の農園を報告してから、すでに2カ月が経過している。毎年同じような農作業の繰り返しが、15年以上続いている。予測不能な天候と、気まぐれな農作業なので、毎年新しい発見と、たくさんの失敗がある。

来春の準備中=2021年11月19日 筆者撮影

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IT大手企業の「デジタル遺産」機能の追加から考えるデジタル遺産問題
『企業法務弁護士による最先端法律事情』第11回

11月 22日 2021年 社会

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北川祥一(きたがわ・しょういち)

 北川綜合法律事務所代表弁護士。弁護士登録後、中国・アジア国際法務分野を専門的に取り扱う法律事務所(当時名称:曾我・瓜生・糸賀法律事務所)に勤務し、大企業クライアントを中心とした多くの国際企業法務案件を取り扱う。その後独立し現事務所を開業。アジア地域の国際ビジネス案件対応を強みの一つとし、国内企業法務、法律顧問業務及び一般民事案件などを幅広くサポート。また、IT関連法務分野、デジタルデータに関する最新の証拠収集技法など最先端分野にも注力し、「アジア国際法務×IT法務」は特徴的な取り扱い分野となっている。著書に『Q&Aデジタルマーケティングの法律実務』(2021年刊、日本加除出版)、『デジタル遺産の法律実務Q&A』(2020年刊・日本加除出版)、『即実践!! 電子契約』(2020年刊・日本加除出版、共著)、『デジタル法務の実務Q&A』(2018年刊・日本加除出版、共著)。講演として「IT時代の紛争管理・労務管理と予防」(2017年)、「デジタル遺産と関連法律実務」(2021年)などがある。

1 「デジタル遺産」機能

 近時、IT大手企業よりその提供するサービスに関連して「デジタル遺産」プログラムなる機能の追加が発表されました。

これは、ユーザーにおいて自身が亡くなった後に当該アカウントの特定のデータへのアクセスを認める人物を指定し、指定された人物は、死亡証明書類を提出し、かつ必要なキーを持っていれば、一定のデータにアクセスできる、というもののようです。

元々、亡くなったユーザーのアカウントへのアクセスのリクエストという手続きは存在しているようですが、これについては、その規約から読み取れる必要書類などからは一定の手続の難しさ・煩雑性があるものと思われ、また、今回の新しい機能がユーザー側からの積極的なデータの開示という特徴を持つこととは異なるものといえるでしょう。

このような「デジタル遺産」機能は、一定のデジタルデータを相続人等に遺したいと考えるユーザーのニーズには資するものといえそうです。

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論理と数理の偽装結婚
『週末農夫の剰余所与論』第21回

10月 11日 2021年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o 株式会社エルデータサイエンス代表取締役。元ファイザーグローバルR&Dシニアディレクター。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

夏野菜が終わり、農園はすでに晩秋になっている。冬支度と来春のための農作業が追いつかない。今年は、梅雨の雑草がいつまでも元気だった。毎年のような異常気象だけれども、そもそも予測不能な気象現象なので、正常気象ということはありえないのだろう。農業が発明される以前の太古から、異常気象との闘いは続いている。おそらく人類は負け組で、植物が勝ち組なのだ。気象現象が予測不能と言ったら、気象学者の真鍋淑郎さんの受賞が決まった今年のノーベル物理学賞の地球温暖化モデルから異論があるかもしれない。しかし、二酸化炭素(CO2)削減の未来予想まで含めれば、やはり未来の気象は予測不能としか言いようがないだろう。

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ビジネス関連特許の9画面表現モデル
『みんなで機械学習』第9回

9月 22日 2021年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o 株式会社Pラーニング研究所設立準備中。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長(臨床試験データベースシステム管理、データマネジメント、統計解析)。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

「みんなで機械学習」第1回では、CAPDサイクル(ビジネスのPDCAサイクルを、機械学習との組み合わせでCheckから始める加速モデル)を紹介して、4回転半のゴールを設定した。前稿までのCAPDサイクル2回転目では、大量の特許データをインターネットから無料で入手して機械学習してみた。AI(人工知能)プログラムを使って「みんなで機械学習」するのはCAPDサイクルの前半で、後半は中小企業経営者が自習する。自習して「ふりだし」に戻る。「みんなで機械学習」するのは、AI技術によって近未来のビジネス環境が激変することへの準備であり、できればビジネスのチャンスにしたい。単純に言って、ほぼ全てのビジネスにおけるサービスにおいて、AI技術による自動化が導入されるだろう。AI技術にとってサービスの自動化は難しい課題ではない。ヒトよりも心地よいサービスとなるかどうかは疑問だけれども、ヒトが作り出して、ヒトが解決できない多くの社会問題・地球環境問題にチャレンジすることがAI技術に期待されているので、ヒトも機械も忙しいのだ。

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過去の「いじめ」の過ちは消えないから
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第219回

9月 15日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆過去の疼きの中で

 東京五輪の開会式の楽曲を担当していたミュージシャンが1990年代中盤の雑誌に掲載された過去のいじめ行為により、開会式直前にその役を辞したことには波紋が広がった。

過去の過ちは反省することで消えないのか、という問題と、「いじめ」という事実のインパクトは大きい。特に障がい者へのいじめに関しては、私の立場から見てきた経験として、「消せない」し「許されない」と断言したい。

心のコントロールの面で、支援が必要な人に大きな傷を負わせたことは残忍な行為として、大きな罪に値する。懺悔(ざんげ)しようが、当事者の傷は癒えないのだという前提で、その反省は消せないまま、一生負い続けなければいけない。その負った反省とその後の改心した上での行動を「反省」の可能性として歓迎したいが、だからといって過去は消えるものではない。

絶望的な言い方かもしれないが、そんな過去の疼(うず)きの中で、人生の道は開いていくのではないかとも思う。

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苦難の中にある人に語る「ヨブ」の苦難
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第218回

9月 06日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆解けない難題

 支援が必要な人に対する活動をしていると宗教的な信念で行動する人と出会い、共に行動することがある。自然災害や障がい者支援、子供のサポートや高齢者との活動でも、「隣人」に向けて自分のある力を発揮するのは、人が元来から持つケアの感覚を行為化したもので、そこに信条や理念が加わると、行動がスムーズになるようだ。

キリスト教の信徒とともに活動を共にした経験からは、さすがに「愛」を説く宗教との支援は相性がよい。その中にあって、私が解けない難題の一つが旧約聖書のヨブ記の記述である。

「理不尽にも」神に試され次々と苦難に陥れられるヨブを「神の御業(みわざ)」なのだと納得することはなかなか難しい。これは「障がい」がある状態の方々や災難に見舞われた方々に「神からの試練」などと言えないことにつながっている。

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お金をどう使うか、で問われる人生の真価
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第217回

8月 13日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆当事者との関係性に影響

最近、お金について、意識しなければいけない機会が多い。引きこもりで悩みながらも、海外の株式運用で日本にいる平均年収の何十倍も稼ぐ人、これまでの蓄財をどうしたらよいか悩む人など。持っている人の使い道はその人の自由である分、その自由の中で何に使うのかは人格が問われるから結構難しい。

ただ「人格を問われる」ことに意識が行かない人には、何に使おうが自分の勝手なのだから、とても気楽かもしれない。ただ、その場合によくあるのは「持っていること」に慣れると持たない不安も出てくるらしく、妙にケチな体質になることもあるのはよく見てきた。

この「お金との付き合い方」は、当事者がよく支援者の「付き合い方」を見ていると感心することがある。持ち物や家、実家の経済状態など、断片的な情報からその人の経済感覚や実際の「お金回り」を想像しているようで、これが微妙に関係性にも影響を与えることもある。

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