п»ї 米中によるもう一つの覇権争い 『中国のものづくり事情』第27回 | ニュース屋台村

米中によるもう一つの覇権争い
『中国のものづくり事情』第27回

8月 17日 2020年 経済

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Factory Network Asia Group

タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。

中国は6月23日、西昌衛星発射センターで、全地球測位システム(GPS)の中国版「北斗」を構成する最後の衛星となる55基目の人工衛星を打ち上げた。

中国は国を挙げて宇宙大国を目指しているが、衛星測位システムにも力を注いできた。中国が北斗の製造に着手したのは1994年で、1基目が打ち上げられたのは2000年10月。以来、打ち上げを重ね、20年かけて北斗の衛星測位システムが完成した。これにより、中国やその周辺の位置情報の精度は、30~60センチまで向上するという。

20年かけて完成した衛星測位システムだが、中国は早くから産業に活用してきた。中商産業研究院によると、衛星測位・位置情報サービス産業の生産額は、11年の700億元(約1兆500億円)から19年には3450億元(約5兆1750億円)と、8年で5倍に拡大した。20年には4000億元(約6兆円)を超える見込みだ。

交通運輸部によると、すでに660万台の商用車、5万1000台の郵便・宅配輸送車両、1356隻の公務船舶などで北斗のシステムが導入されている。新型コロナウイルス禍の北京では、食料品などの無人配送にも活用された。今後は鉄道、道路、水路、航空、郵便など幅広いインフラに活用される計画だ。

民生分野での活用も進んでいる。スマートフォンやカーナビゲーション、ウェアラブル端末などで利用されているが、圧倒的に多いのはやはりスマートフォンだろう。中国では、自動車の運転でもカーナビゲーションよりスマートフォンのアプリを利用するユーザーが多いからだ。

艾瑞諮詢(アイリサーチ)によると、18年時点で中国国内で使用されているスマートフォンの73.6%が北斗の衛星測位システムを採用している。

さらに将来的に期待されるのは、自動車の自動運転への活用だ。北斗と5G(第5世代移動通信システム)が組み合わさることで、精度の飛躍的向上が見込まれる。

中国の宇宙産業には非常に多くの企業が関わっているが、北斗事業の中核を担うのは、北京北斗星通導航技術だ。00年設立と比較的新しい会社だが、深圳証券取引所に上場し、現在の時価総額は156億元(約2344億円)を超える。傘下には、輸送車両関連のシステムを開発する子会社などさまざまな企業を抱えている。

通信に遅延を生じさせないためには、正確な時刻同期を維持するSoC(システム・オン・チップ)が重要になるが、北斗では、高精度のSoCの国産化に成功している。開発したのは傘下の和芯星通科技(北京)で、22ナノメートルの製造プロセスを実現した。

「科創板日報」によると、SoCの開発にはほかにも浙江賽思電子科技などさまざまな企業が携わっている。SoCはロボットやコネクテッドカー、産業用モノのインターネット(IIoT)など幅広い分野に応用されるので、今後、その技術はさまざまな業界で活用されることになるだろう。

◆「一帯一路」を足掛かりに進める海外展開

北斗は、海外への売り込みにも積極的だ。GMDSS(世界海洋遭難安全システム)で展開するとともに、ロシアのGLONASSとの相互利用も進めている。また、国際航空機関や関連組織、標準システムへの展開を推し進めている。

その足掛かりとなるのは、広域経済圏構想「一帯一路」だ。すでにパキスタンやイラクなどと協定を締結しているが、今後も、米国との関係があまり良好ではない国を中心に、北斗を採用する国はますます増えていくだろう。

北斗システム開発の目的は、当然、軍事的側面もある。海外メディアからは、圧倒的なシェアを誇るGPSに依存したくない中国の思惑も指摘されている。宇宙開発は、米中対立の新たな火種となりそうだ。

※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ2020年8月号より転載しています。

https://factorynetasia.cn/front/thinktank

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