引地達也(ひきち・たつや)
特別支援が必要な方の学びの場、みんなの大学校学長、博士(新聞学)。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般財団法人発達支援研究所客員研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
◆障がいに焦点
国連サミット加盟国の全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17項目は目標達成の期日である2030年まで残り7年となった。この目標には「誰ひとり取り残さない」とのキャッチフレーズが掲げられ、目標の中では「障がい者」を対象とした記述も少なくない。17の目標については小中学校で学ぶ機会は増えているようだが、社会での学びは十分とは言えないかもしれない。
働く人にとっても企業の向き合い方で、その認識は大きく変わる。個人的に意識していたとしても、具体的な取り組みには結びつける社会での「器」もない。誰もが自国だけでは生きられない中で、私たちが担う役割として、17の目標を位置づけたいとの考えの下、みんなの大学校でもその「学び」を社会で共有する計画を立てた。
特に17の目標のうち「障がい」との言葉が出てくる箇所や「誰もが」の部分を抽出し、目標の4、10、11、16を重点的に考え、障がい者を支援する機関などと共有し、具体的な行動に移す予定だ。
◆学びをすべての人に
目標4は「質の高い教育をみんなに」、目標10は「人や国の不平等をなくそう」、目標11は「住み続けられるまちづくりを」、目標16は「平等と公正をすべての人に」が項目である。
ユニセフ(UNICEF=国連児童基金)の分かりやすい解説によると、目標4には「すべての人が技術や職業に関する教育や、大学をふくめた高等教育を受けられるようにする」(4-3)、「障がいがあったり、先住民族だったり、特にきびしいくらしを強いられている子どもでも、あらゆる段階の教育や、職業訓練を受けることができるようにする」(4-5)と示す。ここにはみんなの大学校の存在理由でもある、誰もが高等教育を受けられるための役割機関としての自覚が具体的な活動を形作る。
障がい者の生涯学習の枠組みで文部科学省からの委託研究を行いながら、同時にこの目標4を意識して障がいがあることで「学び」が難しくなっている方々への取り組みを進め、ネットワークを広げたい。
◆出来ていない自覚を
目標10には「年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる」(10-29)がある。経済的な不平等からの脱却が大きな目標であるが、経済が先でなくても、どんな境遇や立場の人であっても社会的に排除されずにいられる環境整備は、社会を構成する私たちが出来ることである。
その出来ることは、まずは「出来ていない」ことの自覚から始まるから、障がいによって社会的に取り残されている状態は何かを深く考えてみたい。選挙の投票や地域での活動への参加など、「普通に」参加を促しても、「普通」では難しい現実がある人がいる。その「普通」を取り除くことが、排除を解消する第一歩である。
目標11は「特に女性や子ども、お年寄りや障がいのある人などをふくめて、だれもが、安全で使いやすい緑地や公共の場所を使えるようにする」(11-7)がある。つまり「誰もが」を強く意識した場所を考えるのはハード面からもソフト面からも「新しい場づくり」との感覚が大切だとの私の取り組みと一致する。
◆コミュニケーションを尽くして
新しい場づくりとは、現在、公共施設を運営する民間の指定管理業者と進めている場づくり研究で全国の公共施設向けのガイドラインづくりを進めている。ハード面だけではなく、関わる人が公共の場をどう作っていくかは、関わる人の思いやりや気遣いが必須であるが、それらが整理された上で提供し市民とともに当たり前の空気となっていくのが望ましい。それは、徹底的な議論を経た様々な決定により情報を共有していくことになる。その決定の過程としても機能するのが目標16である。
「あらゆるレベルのものごとが決められるときには、実際に必要とされていることにこたえ、取り残される人がないように、また、人びとが参加しながら、さまざまな人の立場を代表する形でなされるようにする」(16-7)。ゴールが設定されたこれの取り組みではあるが、ゴールと同様にプロセスも大事である。
コミュニケーションを尽くして、これらの目標をクリアしていきたい。
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