п»ї 天安門事件で始まった平成から令和元年の課題 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第167回 | ニュース屋台村

天安門事件で始まった平成から令和元年の課題
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第167回

6月 11日 2019年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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5月35日                     

「今年は6月4日がなく、その日は5月35日らしい」

数か月前、中国でこんなジョークも出ていることを中国の方から聞いた。1989年6月4日の天安門事件から30年であり、中国政府は、その節目に神経を尖(とが)らせている、との皮肉である。

日本から見れば、その日は平成元年の出来事で令和時代の始まりとともに、中国の民主化を叫ぶ方々が自国で言えないことを「自由にモノが言える国」である日本で天安門事件を振り返る言動を行っている。

結局6月4日はやってきたが、これらの声にどのように応えるのか、は私たち社会の令和元年の課題でもあるだろう。

◆叫ぶ声は沈黙

天安門事件が私たちに今も語りかけているのは、中国の人民軍が市民に発砲し、血だらけで運ばれる学生や市民の生々しい映像の影響が大きい。加えて、中国政府はもちろん、当時権力を握っていた鄧小平も詳細な説明をしないままこの世を去ったから、物語は終わっていない。

現実を伝え続けている映像は、たまたまソ連(当時)のゴルバチョフ書記長が北京を訪問した日程に事件が重なり、外国メディアが北京に集結していたために、撮影され世界に発信された。この「痛手」から中国政府のメディア対策の徹底ぶりがその後も今も顕著となったともいえる。

天安門事件の民主化運動のリーダーたちは海外に置かれたまま、その発言は中国国内には届かない仕組みにしているし、連座制により家族の自由も制限されては、民主化を叫ぶ声は沈黙するしかないであろう。

◆異質な劉暁波

その中でノーベル平和賞を受賞した劉暁波は海外に亡命することなく中国に居続けたが、北京五輪が開催された2008年に、中国の未来ビジョンである「08憲章」をインターネットに発表し、国家転覆罪に問われ獄中で亡くなった。

文化大革命後、北京師範大学で初めて博士号を取得した知識人エリートの彼は米コロンビア大の研究員の時に帰国し、天安門事件に身を投じた。徹底した非暴力主義を貫き、ハンガーストライキで抗議し、天安門広場で「学生諸君たちよ、キャンパスに帰ろう、命を大切にしよう、未来の民主主義を建設するために君たちはこれから重い責任がある」と訴え、人民軍との交渉で広場の無血開城を成し遂げた人物である。

事件の泥沼化を阻止した功績は、事が終われば中国側にとっては危険分子だった。その後投獄され、自由は奪われ、その発言も制限された。

◆ドイツで暮らす妻

関係者によると、芸術家の妻、劉霞さんはドイツで静かに暮らす。連座制により中国では弟が獄中におり、声を出すことはできない。あからさまな殺戮(さつりく)がないにせよ、このように自由が奪われた状態に市民が追いやられることは、国家に権力を与えすぎると起こる摂理のようなものかもしれない。

天安門事件の映像は、中国の警戒心とともに、外国の目線を無視できない、という二つの行動を導き出している。天安門事件からの30周年に海外で民主化を叫ぶ中国人は少なくない。その声を隣人としてどう受け止めればよいかが、平和を願う私たちに突き付けられている。

■学びで君が花開く! 特別支援が必要な方の学びの場

シャローム大学校

http://www.shalom.wess.or.jp/

■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム

http://psycure.jp/column/8/

■ケアメディア推進プロジェクト

http://www.caremedia.link

■引地達也のブログ

http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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