引地達也(ひきち・たつや)
特別支援が必要な方の学びの場、シャローム大学校学長、一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
◆「障壁」を取り除く
先般伝えているように「障がい者雇用センター」なる新たなコミュニティーを立ち上げ、現在、障がい者の就労支援と就労定着支援に関して真剣に考え、そして行動しようとする仲間を集めている。その第一歩として、11月27日に東京都千代田区のLEC水道橋校を会場にして、「つながるからはじめよう」を行う予定だ。山本登志哉・発達支援研究所長の発達障がい者とのコミュニケーションの関する講演や企業や支援者からの事例発表、そして交流会を計画している。
対象は就労移行支援事業所をはじめとする福祉事業者の支援者、障がい者雇用をしている、またはしようとする企業の担当者、さらに企業の人事に関する役割を期待されている社労士、そして何よりも就職しようとする障がい者とその家族や関係者、さらに実際に働いている障がい者の方々である。
これらそれぞれの立場からこのコミュニティーに集まり、交わることがまずは私たちの狙い。立場によって分断化してしまうことによる「障がい者雇用」での「障壁」を取り除く試みであり、この交わりが受益者であるはずの障がい者をはじめ企業にとっても確実に良い効果を生むものだと力説し、仲間に、と呼び掛けている。
◆福祉方式から会社方式ゆえに
かつては主に社会福祉法人などが運営していた障がい者の支援施設は、行政の措置時代の名残を引きずり、「福祉のやり方」がフォーマット化されている箇所は今も現実に残っているが、現在の就労移行事業所は株式会社など、民間の参入が多い。そのため、「福祉方式」は確実に「企業方式」に行動が変化しているのは違いないのだが、極端な言い方をすれば株式会社のやり方を踏襲しすぎての新たな分断化が生まれているのも事実としてある。
例えば、自事業所の利用者を就職させようと企業に個別なアプローチを「営業」として積極的な働きかけをするのはよいが、一つの事業所の利用者は20人以内の場合が多く、そこでマッチングできなければ企業との関係は終了してしまう。これは私自身も、企業が「口を開けて待っている状態」に出合いつつ、自分の関係する事業所に該当者がいなければ、そのおいしい話は終わってしまうのである。
各社が自分の商品を売り込み、買ってもらえなかったら終わり、ではなく、広いコミュニティーの中で、就労支援員自身がつながり、企業もつながり、一人でも多くの方に雇用の機会を提供する、という同じ立場で動ければ、自然とその融合は情報交換から始まり、自分が属する事業所以外の就職希望者につながるはずだ。
◆定着支援の充実に向け
このコミュニティーから生まれるのは、就労という入口でのつながりから就労を定着させる、という働く障がい者を中心に置いて障がい者を支援しようとする企業と支援員による取り組みだ。実はこの定着支援こそが現在において、最も必要とされながら、なかなか機能化するのが難しい分野である。
定着支援事業は就労移行支援事業所から就労した際に、その企業に長く「定着」するための支援事業で、就労して6か月は通所していた事業所が定着支援するケースが多いが、その後は新たな契約に基づいて、支援する個別の定着支援事業に切り替わる、という仕組みだ。
まずは入社しての定着支援は就労移行支援事業所の支援員が定期的な面談やヒアリング、コミュニケーションなどを行い、課題が抽出された場合は、企業にそれを伝えたり、担当者と当事者との3者面談で課題をクリアしたり、順調に仕事ができていることを確認したりする。
簡単に書いてしまったが、これらをやること自体を企業が面倒くさがるケースは多い。当事者の口から苦情が出ないのを、何となく「うまくいっている」と勘違いし、話し合いの場を持たないまま時間が過ぎると、いつかそれは就労者にとっては「話を聞いてくれない」環境となり、企業への不信が募ってくるケースもある。就労者と支援者の潤滑なコミュニケーションを常に行えるには、基本的に「それが必要だ」と思える当事者、支援者、企業担当者の共通認識である。私はこれを社会の共通善として、広め、障がい者雇用を広く進めたいと考えている。
それを啓もうするコミュニティーとしても、このセンターは機能したい。これは社会の利益のための行動である。是非、一緒にコミュニティーを築いてみませんか。まずはフォーラムへの参加をお待ちしています。懇親会もあるので、お気軽にどうぞ。
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