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高等教育機機関の発達障がいの対応からインクルーシブの在り方を探る
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第182回

3月 03日 2020年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆模索中の活動

日本LD学会は2019年11月25日発行の「LD研究第28巻第4号」で「大学における発達障害者支援の展開―最前線の現場から―」を特集した。東京大、京都大、筑波大、早稲田大、関西学院大からそれぞれ発達障がいのある学生への支援活動が紹介され、その効果や課題が示されており、同時に上記の大学以外の多くの大学でも同様の支援方策および活動が展開されているが、最適な活動形態は模索中の段階であることも浮き彫りにしている。

この中で東京大の報告は「障害学生支援スタンダードの構築に向けて―東京大学『障害と高等教育に関するプラットフォーム形成事業(PHED)』の活動から―」 と題され、ほかの高等教育機関のモデルになりそうで面白い。

この取り組みは東大の障がいのある学生だけではなく、増加する留学生も含めて「国際的な共通理解に基づく『障害学生支援』が求められている」 との前提を掲げ「目指すべきは、特定少数の大学が充実した支援を行う状況ではなく、全国のどの大学においても、大学の社会的役割として、障害のある学生への支援の取り組みを充実させ、その取り組みが特別なことではない状態にしていくこと」 とする。

◆PHEDとは何か

日本の高等教育機関におけるスタンダードの構築を念頭に置かれたPHED(Platform of Higher Education and Disability)は文部科学省が2017年度の「社会で活躍する障害学生支援プラットフォーム形成事業」の予算的補助を受けたものであり、国の政策と合致し普及型の開発が待たれる分野である。

PHEDでは、社会的要請の多いテーマの知識・経験の集約を構造化するためにテーマ別検討部会「Special Interest Group(SIG)」として、「アクセシビリティ保障」「支援技術活動」「キャンパス・ソーシャルワーク」「根拠資料と判断ガイドライン」「防災・災害時等緊急対策」「キャリア・就労移行支援」「法的根拠の理解・遵守(じゅんしゅ)」「実習および専門職養成課程での配慮」の八つに分けて、それぞれ3~9人の構成メンバーで検討し、2020年度の事業終了までに「クオリティーインディケーター」(QI)を作成する計画という。

QIは医療分野での指標として作成されるものであるが、東大では米国での高等教育機関で用いられている例にならい、支援体制の構築に向けた資源の確保、啓発の推進、活動の方法を示すこととし、2019年度に示されている内容としては「選択肢や可能性についての情報提供は必要だが、本人の進路について過度な方向づけを行っていないかを常に振り返る必要がある。障害者向けとされる画一的な就労支援に陥ってはならない」 などが挙げられている。

◆上から目線ではなく

東大の取り組みはインクルーシブ教育の保障を切り口にして、学内のコミュニケーション環境を整え、問題を抽出し課題化した上で解決を目指していくプラットフォーム形成というプロセスで行われている。上からの目線で物事を考える、決める、のではなく、ボトムアップに問題を抽出しながら水平型に議論し展開する雰囲気があるから、誰でも入りやすそうだ。

ただ、これは多くのプロジェクトがそうであるように、「最初だけ」の水平型になる可能性もある。組織の多くがヒエラルキーを作りたがるのだ。運用も同じようにインクルーシブな状態を「当たり前」にするために、どのようなコミュニケーション行為をしていくのか、東大のQI作成と作成に至るプロセスを今後も注目したい。

■学びで君が花開く! 特別支援が必要な方の学びの場、シャローム大学校

http://www.shalom.wess.or.jp/

■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム

http://psycure.jp/column/8/

■ケアメディア推進プロジェクト

http://www.caremedia.link

■引地達也のブログ

http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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