п»ї 医療的ケア者への生涯学習に誰が向き合うのか『ジャーナリスティックなやさしい未来』第222回 | ニュース屋台村

医療的ケア者への生涯学習に誰が向き合うのか
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第222回

12月 20日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆変わらない現状

 「第2回医療的ケア児者の生涯学習を推進するフォーラム」が10月29日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターを会場にズーム参加とのハイブリットで行われた。総勢約250人の参加者は昨年より増加しており、医療的ケア者の学びの世界と可能性が少しずつ広がっているのを実感したが、保護者や関係者の痛切な思いは、国の制度がない現状の改善を促している現状は変わらないままだ。

このフォーラムは、この「学びの場が与えられていない」状況の改善に向けて昨年から各地の声を結び付け、それを発信していこうと、みんなの大学校と重度障害者・生涯学習ネットワークが主催となり、文部科学省の「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」の一環として、文科省の障害者の生涯学習を推進する政策に位置づけようとの狙いで行われている。

◆いつでも、どこでも、だれでも

 具体的な目標は(1)国の障がい者の生涯学習に関する施策の理解・啓発を推進する(2)学校卒業後の学びの機会と場の実際について周知し、その意義について理解を広める(3)学校卒業後の訪問型生涯学習の制度化に向けた発信を行う、の3項目。

実践している立場からすれば、「いつでも、どこでも、だれにでも、学ぶ喜びを!」を合言葉に、医療的ケアの必要な方々の学校卒業後の学びを支え、その結果見てきた「学ぶ喜び」が、可能性の芽を育て、生命を強めていることを広めたいという純粋な思いが強い。

案内文にも「その笑顔やまなざしが、人を動かしています。学び続けたいという願いを叶える機会と場を『ひろめる・深める』ことが私たちの使命」と書き、制度化を目標にする中で全国広く仲間づくりを進めるのが急務であるとの認識である。

◆研究・当事者らの登壇

 フォーラムでは飯野順子・重度障害者・生涯学習ネットワーク代表と文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室の清重隆信室長があいさつに立ち、井口啓太郎・同室係長が行政説明を行った。

基調発言では「重度障害者の生涯学習の現状とこれから」と題して菅野敦・東京学芸大学名誉教授がこれまでの実践研究から今後の展望とポイントを示した。実践・活動紹介として東京都大田区の「NPO法人訪問大学おおきなき」の相澤純一理事長と保護者の立場から東京都渋谷区重症心身障害児(者)を守る倉本雅代子さんが報告し、重度障害者の学びに取り組む愛媛大学から苅田知則教授が概要を説明した。

さらに「本人のニーズと家族の願いに応えた親の会として取り組み」と題して安部井聖子・東京都重症心身障害児(者)を守る会会長が「思い」から始まった活動が行政の現実的な壁に当たったことなどを熱く語った。さらに最近の動向として「就労支援継続B型を活用した学びの支援」を行っている就労支援継続B型事業所みんなの大学校大田校から、学びと仕事の組み合わせについての事例を紹介。「社会教育に位置づけた学びを福祉制度の活用で支援」として行政から石丸明子・新宿区福祉部障害者福祉課支援係主査、民間から藤原千里・NPO法人ひまわりProject Team理事長が発表した。

◆自分がやる意識で

 シンポジウムは「重度障がい者への生涯学習の制度創設に向けて」と題し、今後の展開に向けて行政の壁をどう乗り越えるかに話が集中し、みんなの大学校の取組の詳細を私がさらに説明することになった。

エンディングでは、私が重度障がい者の青年が学びに希望を持っていたところ、生活介護事業所でその学びを実践しようとしたら、「福祉サービスでないためできません」との判断で保留になり、対策を考えているうちにその青年が亡くなったことを紹介し、私自身が「学びへの希望をすぐに応えられる社会にしなければならない」と訴えた。

それは、冒頭で飯野代表が、重度障がい者への学びを「自分がやるという意識で」と話されたことと同和し、「制度がないから」とあきらめるのではなく、「ないから」私が動く、作る、という心持で動いていくことが、少しずつ力になっていくのだと思う。

重度障がいがあっても「学びたい」という思いがある方は是非、ご連絡ください。その声から事は始まります。

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