п»ї 学びで「開かせる」ためのプレーヤーを求めて『ジャーナリスティックなやさしい未来』第225回 | ニュース屋台村

学びで「開かせる」ためのプレーヤーを求めて
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第225回

1月 17日 2022年 社会

LINEで送る
Pocket

引地達也(ひきち・たつや)

%e3%80%8e%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%bc%e3%83%8a%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%83%e3%82%af%e3%81%aa%e3%82%84%e3%81%95%e3%81%97%e3%81%84%e6%9c%aa%e6%9d%a5%e3%80%8f%e5%bc%95%e5%9c%b0%e9%81%94 特別支援が必要な方の学びの場、みんなの大学校学長、博士(新聞学)。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般財団法人発達支援研究所客員研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。

◆歴史・継承・発展

文部科学省の障がい者の生涯学習を推進する事業を進める中で、今年度の「市民と障がい者が学び合う」というコンセプトのオープンキャンパスは終了し、来年度に向けての構想を練り始めている。オープンキャンパスに見学に来ていた東京都教育庁から過日、インタビューを受けて、自分が数年やり続けていることを都内で自然発生的にできないかという発想に行き着く。

都教育庁では社会教育の枠組みで障がい者の生涯教育を考えてきており、公民館を舞台に障がい者が地域で学ぶ「青年学級」が全国に先駆けて始まった歴史がある。今後は歴史の継承と発展が課題だ。

その未来を描く時に、障がい者側のニーズはひしひしと感じながら、問題は誰がそれを担うかである。「みんなの大学校」のキャッチフレーズでもある、関わる人が「開く」ための学びを実施するプレーヤーがいないのである。教育・産業・福祉などの各分野にまたがるこの「障がい者の学び」のプレーヤーを作るという視点での取り組みが急務だ。

◆サービスと実態のずれ

「障がい者の学び」そのものもまだ社会に馴染んでいるわけではない。

「障がい」と「学び」の組み合わせの実感がないのである。取り組みに参加してもらうことが最も有効な普及策だ。自分と社会との障がいがない人と、自分と社会との間に障がいがある人が同じ場所にいる実態こそが、障がいについて考え、その障がいを乗り越えようとしたり、排除しようとしたりする動きにつながっていく。

しかしながら、福祉サービスの中で位置づけられた「障がい」という固定観念の中では新しい世界に向かうのは難しい。先日も知的障がいのある男性と自治体の担当者、相談支援員らと4者面談を行った際には、相談支援者の目線と、自治体の目線の微妙なずれと、当事者の思いとの大きなずれを感じた。

これは、この時に限ったことではなく、起こりがちな「サービス」と「実態」のずれとギャップであるが、この問題を是正しようという動きは鈍い。私も、誰もが「悪い」という自覚もなくずれは生じ、善意が基本にある状況では、率直な指摘にもためらってしまう。

◆素のままの自分で話せる環境

この場面で相談員は当事者が過去に悩んでいたことを、この相談員に相談しなかったことを課題と思っているようで、「なんで相談しなかったの?」と問いただすが、その当事者は口をもごもごと動かすだけで、言葉になっていない。

なぜ相談しなかったのか。それは「その相談員が嫌い」だからであろうことは本人の反応から見て取れた。しかしこの相談員が悪いわけではなく、支援を仕事にする強いモチベーションは「何とかしたい」という気持ちも伝わってくる。

だから嫌われるのは、人間性というよりは福祉サービスに落とし込む過程で非人間的なやりとりによる所作が利用者からは「扱われている」という感覚を喚起させてしまっているのだろう。自分の夢や希望を障がいがあることで否定されているように当事者は受け取ったし、それが嫌だったのだ。

支援者から見れば、現実を見据えながら行動することが最もリスクを回避できるという方法論。誰かに言えば、問題は解決できたかもしれないが、その場がないのも社会の課題だ。障がい者が悩んだ時に福祉サービスに頼らず、素の自分のまま話ができる環境が、新たな障がいを無くしていくはずだ。

◆事業所で学べるように

「話ができる環境を作る」ことも障がい者に学びの場を提供する、効果として期待している。場を作ることで、その場は参加する人が増えるほど、発展し必要な機能を備えていく。そのためにも、場づくりと当事者を集めるのと同じように、各地でプレーヤーを作ることも視野に置く必要がある。

「学び」で切り開いてきた私としては、教育分野にこだわり続けたいものの、障害者雇用推進法に基づき、広がる障がい者雇用と、障がい者の就労を支援する事業所でも「学び」は展開されていい。

全国で増加する就労移行支援事業所は駅に近い利便性のよい場所にあるケースが多い。この場所を障がい者の学びの場として有効活用できないだろうか。さらに、事業所が主体となって地域の公民館とともに学びの場を展開してもよいかもしれない。この動きからプレーヤーが生まれないだろうか。賛同する事業所のみなさま、お待ちしております。

One response so far

コメントを残す