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インクルーシブな学びに向けた各論の面白さと楽しさ
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第229回

4月 04日 2022年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆柔らかい議論を

2月26日に行われた「共に学び、生きる共生社会コンファレンス関東甲信越」について、前回は全体会での当事者の声を中心に紹介したので、今回は分科会での各論を報告したい。

分科会はメーンテーマである「障害者の生涯学習の未来を創造する―『学び』を通じた共生社会の新たな流れ―」を構成する要素として考えられており、四つの分科会の大きなテーマは「担い手育成」「特別支援学校からの継続性」「地域でのつながり」「社会・はたらきとの接点」である。

障がい者の学びをテーマにすると、どうしても「学び」のイメージが堅苦しく、何らかの学習という型に入れようとの感覚が先立ってしまうが、未来を創造するには柔軟な発想が必要で、分科会では二つのコーディネーターを文部科学省の担当者に「柔らかく」仕切ってもらいながら、多くの方に柔らかい新しい一歩に向けての議論が出来たのではないかと思う。

◆「不純」でもよい

その柔らかい一歩で重要なのは、学びが「面白いこと」。そして参加の動機が「不純でもよいこと」かもしれない。分科会「公民館でつながるなかま~しょうがいを越えた出会いと学び~」では群馬県邑楽町中央公民館、神奈川県東大和市中央公民館ビートクラブ、東京都町田市障がい者青年学級ひかり学級の3か所からの報告があり、それぞれ地域での障がい者の学びの場の実態や活動内容はどれも楽しそうな様子で、スタッフ、当事者からの発表は、参加することでつながることを示してくれた。

その中で印象的だったのは、ボランティアスタッフの参加動機が「かわいい女の子と出会えないか」だったとの告白。この正直な声はコンファレンス参加者の気持ちを和らげて、「実は自分も」という雰囲気にもなった。これが「不純」だと思ってしまうのは、「学び」「学級」「公民館」という硬い言葉から周囲が勝手に襟(えり)を正してしまっているだけで、もう少し柔らかくつながる工夫が大事だと確認した。

◆育成と継続

ここ数年で常に課題として挙げれられるのが「担い手の育成」である。「障害者の生涯学習活動の支援者・伴走者をひろげていくために」として障害者の生涯学習の担い手となる人材育成の在り方を検討した分科会では、東京都立あきる野学園や国分寺市のくぬぎ教室の実践報告、梶野光信・東京都教育庁主任社会教育主事から都の人材育成の視点を示してもらった。

さらに「未来を創造する」テーマとして、今回新しい視点として示したのが「特別支援学校からの継続」である。18歳以降を対象にしている生涯学習が助走なしに始まることへの抵抗をなくすために、特別支援学校時から学びを継続する視点での取り組みが必要との認識の上で「特別支援学校における生涯学習を見据えた実践と地域とのつながり」を設定した。

報告は東京都立青峰学園、千葉県立市川大野高等学園、秋田大学教育文化学部附属特別支援学校。秋田においては私自身も講義や議論で関わっていたので、その歩みの確かさは知っていたから、初めてこの場で取り上げられたことがうれしい。

◆度肝を抜かれた報告

さらに社会とつながる視点で毎年恒例となったのが、分科会「カフェを介した『地域共生』の実践」である。今回は特別支援学校でのカフェの取り組みから地域への広がりを山梨県立高等支援学校桃花台学園が報告し、地域で元気な食堂になっている栃木県真岡市の「そらまめ食堂」の取り組みと障がい者の芸術活動の場として注目されている神奈川県平塚市の「愉快Galley COOCA」の活動を紹介した。

障がい者の表現作品をアート作品として演出し市場で認められている根底には、表現できる「自由さ」がある。時間通り決められた作業をするという一般の福祉事業所のスタイルではなく、気が乗らないときには横になってゆっくりしている利用者でも気分がよい時には創作活動を行い、それが金銭的価値を生む作品となり、仕事になるという構図だ。

この活動に参加者の1人は斬新で「度肝を抜かれた」というが、人の可能性を信じるから出来るこのような活動が増えるのは、きっと福祉領域で「面白い」が広がっていくことと並行していくのではないかと思う。

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