北川祥一(きたがわ・しょういち)
北川綜合法律事務所代表弁護士。弁護士登録後、中国・アジア国際法務分野を中心的に取り扱う法律事務所(当時名称:曾我・瓜生・糸賀法律事務所)に勤務し、大企業クライアントを中心とした多くの国際企業法務案件を取り扱う。その後独立し現事務所を開業し、中国・台湾・マレーシアなどのアジア国際ビジネスを総合的にサポートしつつ、IT関連法務分野にも注力している。共同著書に『デジタル法務の実務Q&A『(2018年刊・日本加除出版)。講演として「IT時代の紛争の解決と予防」(2016年)、「IT時代の紛争管理・労務管理と予防」(2017年)などを行っている。
拙稿第6回(2018年3月 27日 )で触れた、中国国内における運営で収集または生成した個人情報及び重要データの国内保存義務、いわゆる一種のデータローカリゼーション規制は、その後に公開された「個人情報及び重要データ国外送信安全評価弁法(意見募集稿)」(2017年4月11日、注1)において、この点に関する規制対象主体が重要情報インフラの運営者のみから、インターネット運営者にまで拡大され(意見募集稿であるため今後の動向を見守る必要はありますが)、マーケティング戦略などにおいて各データの利用を行う企業などに大きなインパクトを与え得るものとなっています。
ところで、このデータの「国外送信」とはどのような行為を指すのかを理解することが、社内体制の構築・対応を検討する上で、重要なポイントの一つとなるところでしょう。
この点については、まだ募集意見稿の段階ではありますが、「情報安全技術 データ国外送信安全評価指南(募集意見稿)」(2017年8月25日、注2)において一定の解釈が明らかにされているところです。
まず、基本的にデータの国外送信とは、インターネット運営者がインターネットを通じるなどの方式で、中華人民共和国内の運営中に収集または生成した個人情報及び重要データを、直接提供などの方式で、国外の機構、組織または個人に提供をする行為をいうものとされています。
他方で、中国国内における送信についても以下のような場合には、関連法の規制対象となる「国外送信」とされ得る点に注意が必要となります。
中国国内への送信であっても、中国の司法管轄に属していないかまたは中国国内に登録をしていない主体に対する個人情報及び重要データの提供の場合▽データが中国以外の場所に転送保存されていなくても、国外の機構、組織、個人が訪問して閲覧することができる場合(公開情報、ウェブページ閲覧を除く)は、国外送信に該当するとされています。
また、インターネット運営者グループ内部の国内から国外へのデータ転送についても、それが中国国内運営中に収集及び作成された個人情報及び重要テータである場合には、国外送信に該当することが規定されています。
関連当局の「国外送信」の考え方について一定の理解が可能であるところですが、まだ意見募集稿であることもあり、引き続き、正式な法規制定、実務動向を注視する必要があるところと言えます。
(注1)原文は「个人信息和重要数据出境安全评估办法(征求意见稿)」
(注2)原文は「信息安全技术 数据出境安全评估指南(征求意见稿)」
※本稿は、実際の取引・具体的案件などに対する助言を目的とするものではなく、外国法令などの情報・翻訳の正確性を保証するものではありません。実際の取引・具体的案件の実行などに際しては、必ず個別具体的事情を基に専門家への相談などを行う必要がある点にはご注意ください。
※北川綜合法律事務所
https://www.kitagawa-law.com/
※『企業法務弁護士による最先端法律事情』過去の関連記事は以下の通り
第6回~近時のデータ保護規制、中国インターネット安全法関連法規~
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第5回「デジタルフォレンジック」をご存じですか?(その5)
https://www.newsyataimura.com/?p=6527#more-6527
第4回「デジタルフォレンジック」をご存じですか?(その4)
https://www.newsyataimura.com/?p=5556
第3回「デジタルフォレンジック」をご存じですか?(その3)
https://www.newsyataimura.com/?p=5173#more-5173
第2回「デジタルフォレンジック」をご存じですか?(その2)
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第1回「デジタルフォレンジック」をご存じですか?
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