迎洋一郎(むかえ・よういちろう)
1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。
「ものづくり研究家」を自称してきた私は、この「ニュース屋台村」に「ものづくり一徹本舗」という屋台を出し、2017年12月まで計30回にわたって工場での品質管理や製造など、ものづくりについて解説してきました。まもなく80歳の大台に手が届く齢となりましたが、これまでをふり返ってみると、まさに「ものづくり一筋の人生」だったと思います。その大きなきっかけとなったのはなんと言っても、高校卒業後に入社した豊田合成で、トヨタ自動車の強さを支える要素の一つとされる「トヨタ生産方式」の産みの親とも称される故・大野耐一先生(トヨタ自動車元副社長、1912~90年)から直接ご指導を受けるという幸運にめぐりあえたことです。
ものづくりに関する私の知見のすべてを書き記した「ものづくり一徹本舗」は30回の連載で一応の区切りをつけましたが、「ニュース屋台村」の編集委員会によると、一連の連載は現在も多くの読者の関心を集め、作業現場などで参考にされているといいます。まことにうれしく、光栄に思います。
編集委員会によると、コメント欄にこのほど、ある質問が寄せられました。拙稿の第5回「改善結果の評価(その2)―工数生産性」(2013年10月18日付)に関するもので、「工場の生産性はどう計算しますか?」というお尋ねです。短い文面ですが、日本語を理解する外国の方からでした。そこで、同じような疑問をもっておられる人がいるかも知れないと考え、今回は番外編として、ご質問に答えるべく「工数生産性の計算方法」について詳述したいと思います。
◆工数生産性の算出方法
「工数生産性」の算出方法と目的について、以下に説明します。
【計算式】合格品出来高÷使った作業時間=時間当たりの生産性値、となります。
【目的】最大のねらいは、製造原価低減です。
日々の改善(ムダ・ムラ・ムリを減らす、人作業を機械化・自働化する、不良低減・歩留まり向上を図る、設備・人の可動率向上させる……など)の成果をチェックするものさしとして使います。
【利点】職場単位で毎日チェックできますので、朝会やミーティングなどで活用できます。
◆付加価値生産性の算出方法
最近では、これに加えて「付加価値生産性」を評価することも重要になってきています。この算出方法は、以下の通りです。
【計算式】売上金額-(材料費+部品費+外注加工費)÷人件費(投入工数でも可)=付加価値生産性、となります。
【目的】付加価値売り上げ、すなわち、売上高-(材料費+部品費+外注加工費) ですが、①この数値がいかに少ない人・時間でつくるか知恵を絞り、改善を進める②この大きな方針の下で一丸となって日々いかに改善を進めるか――その結果は、原価低減・収益向上となって現れます。
【留意すべき点】
1、売上高は多い方がよい。
2、材料費は少ない方がよい。すなわち、不良低減・歩留まり向上・仕掛け材料の低減につながります。
3、部品費は少ない方がよい。100%良品受け入れ、加工工程の不良低減、在庫低減につながります。
4、外注加工費は少ない方がよい。社内の人・時間を削減するために外注化を進めては改善が進みません。更に外注加工発注にかかる事務処理のムダ、通い箱作成、箱詰め、取り出しのムダ、加工リードタイム延長ムダ、品質問題の顕在化とフイードバックの遅れによる損失発生などにつながります。
5、人件費または工数は少ないほどよい。つまり、機械設備および人の可動率を高めることにつながります。
【利点】職場単位の管理がやりやすいし、現時点の生産性で利益がいくら出ているのか細かくチェックできるので、年間目標値を立てて方針を策定したり、管理や展開したりすることが進めやすくなります。
以上、参考にして下さい。
※『ものづくり一徹本舗』過去の関連記事は以下の通り
第5回 改善結果の評価(その2)―工数生産性(2013年10月18日)
返事どうもありがとうございました。※『ものづくり一徹本舗』過去の関連記事は以下の通り
第5回 改善結果の評価(その2)―工数生産性(2013年10月18日)の内容が安くわかりましたが、全体工場工数生産性の概念がありますか?例えば工場で100シリ-ズを生産します。各シリ-ズのネックMCTが違います。トタルは1カ月に500人で250,000本を生産します(70ラインで)。工場の工数生産性意味がありますか?
ご質問について、迎洋一郎さんからの回答は以下の通りです。参考にしてください。
1、工場工数生産性の概念
製造部門の生産性実力を、定量的に評価し改善目標値を定めて行動を起こす
2、多種多量複数加工ラインでの生産性評価方法
1)各ラインごとに評価する(毎日の合格品数をそれに投入する工数で割る)
2)加工する品番が複数点あり、MCT(マシン・サイクル・タイム=機械がワーク1個または1ショット加工する時間)がそれぞれ異なる時の出来高評価
決まりはありませんが、私の場合は品番に係数を設定しています
例えば
品番 MCT 係数 出来高 理論出来高
A 30″ 0.75 1000個 750個
B 40 1.00 3000個 3000個
C 50 1.25 800個 1000個
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3)投入工数は実際に発生する費用時間を用いますが、会社によっては計画停止時間(朝礼・教育・5S停止)を差し引いて算出しています
3、工場全体の生産性評価は、前回説明した付加価値生産性を毎月の目標を掲げ評価し管理する (了)