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量子コンピューターの現状と今後
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第247回

8月 11日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

私たちは日常生活の中で、パソコンや携帯電話などを通してコンピューター技術を当たり前のように使っている。しかしその仕組みや論理構造などを理解している人は少ないと思われる。ましてや現代の最先端技術であるスーパーコンピューター、人工知能(AI)、量子コンピューターについては「その何たるか?」を知る人はごく一部に限られている。最近マスコミでもてはやされる「AI万能論」などを見ていると、本質を理解しない軽薄な議論が行われているような気がする。そこで今回は、バンコック銀行の白枝祐介さんがまとめた量子コンピューターのレポートをご紹介したい。量子コンピューターについては時々新聞・雑誌などで取り上げられるが、そもそも仕組みが複雑であり理解するのが難解な代物(しろもの)である。白枝さんはその量子コンピューターをなるべく平易に説明しようと努めた。みなさんの理解に一助になれば幸いです。

1. はじめに

量子関連技術は、AI技術とともに近年特に注目を集めている技術であり、年々その期待

感が高まっている。各国とも国家戦略の重要領域に量子情報技術を位置づけており、GAFAMを筆頭に大手IT企業なども大規模投資を進めるなど、ますます発展していくことが見込まれる。そこで、従来型のコンピューターの基本や開発の歴史も踏まえながら、AI技術との関係性にも触れつつ、量子コンピューター開発の現在地と将来の展望について考察していきたい。

2. コンピューターの歴史について

1) コンピューターとは

【図表1】コンピューターの構成

出典:筆者作成

明確な定義はないが、コンピューターとは数学や物理の法則を使って計算をする機械といえる。また、ハードウェアとソフトウェアはコンピューターを動かすにあたって車の両輪のような関係であり、高速に計算を行うためには双方の発展が必要である。

2) 古典コンピューターについて

【図表2】古典コンピューター年表       【図表3】ノイマン型の仕組み

出典: 図表2・3ともに各社HPなどを参考に筆者作成

 

古典コンピューターは、半導体技術の発展とともに、高速化・小型化が進み、スマートフォンやPC、メインフレームなど様々な形で現代社会に広く深く浸透している。

一方で、データやプログラムを一つずつ処理する特徴をもつノイマン型アーキテクチャを採用しているため、データ量が多くなると処理量が増え、また消費電力も膨大になる。

米国及び米国企業が黎明(れいめい)期より業界をリードしているが、優れた研究者を長きにわたり輩出できていることに加え、研究者などの多くがスタートアップ企業を設立し、ビジネスとして成功させる流れができていることがその理由の一つとして考えられる。

3) スーパーコンピューターについて

【図表4】活用領域       【図表5】TOP500(性能指標)の世界1位推移

出典:筆者作成        出典:1993-2022 TOP500.org (c)や各種HPから筆者作成

 

スーパーコンピューターは、シミュレーションなどの大規模計算を目的として開発、運用がされてきた。具体的な活用領域は、創薬・機械学習などであり、さらに運用先や利用者は国や研究機関、大企業と、利用範囲が限定的である。

また、シミュレーションなどにおいて大量のデータを高速で処理する必要があるが、処理速度の高速化に必要なトランジスタの集積化の限界が近づいており、かつデータ処理量の増加に伴い消費電力が莫大(ばくだい)になるといった課題に直面している。課題解決のためには、新たな技術の開発や効率的な計算方法(アルゴリズム)の発見が必要と考えられる。

【図表6】各国の開発競争

出典:理化学研究所

2000年代以降、インターネットなどが急速に普及し、大量のデータが蓄積される中、スーパーコンピューター自体の性能も進化したことで、社会や・産業に大きなインパクトを与えられるようなシミュレーションが可能となり、その結果、経済大国間の開発競争が激化している。

参入企業でみると、米国は、スタートアップや大手IT企業が中心となって開発している。一方で、日本の参入企業は大手IT企業のみであり、また中国は企業ではなく、大学・研究機関にて開発、運用が行われるなど、各国の戦略や体制の違いが見て取れる。

4) AIについて

【図表7】AI技術の時系列

出典:筆者作成 

AI技術及びニューラルネットワークの理論は、ブームと停滞を繰り返していたが、ハードの進化や優れたアルゴリズムの発見、ビッグデータが計測・蓄積可能になったことで、足元大きく発展し、人が担っていた一部の作業を代替し始めている。

【図表8】AI技術の分類         【図表9】AIの活用領域

出典:図表8・9ともに筆者作成

特に、機械学習とその一分野のディープラーニングの発展著しいが、どちらもコンピューターにデータを与え、数理モデルを作らせる(ルールを発見させる)ことで分析や予測を行うという仕組みは一緒である一方、使われるアルゴリズムが異なり、それぞれに長短がある。

そのうち機械学習は、相当数の適切なデータを人の手によって準備し、課題解決のために適切なモデルやアルゴリズムを選択するスキルが必要となる。

【図表10】ニューラルネットワーク  【図表11】機械学習・ディープラーニングに有効な手法

出典:各社HP資料などから筆者作成   出典:筆者作成

ディープラーニングは、機械学習の一手法であり、ニューラルネットワークという人の脳の情報処理を模したアルゴリズムを使い、そして中間層を多層構造化することにより、複雑な場合分けや予測を可能としており、人間が介在しルールを設定しなくても自律的に特徴やルールを学習し、自動的に判断してアウトプットを行う点が機械学習と異なる。

機械学習や、ディープラーニングに有効な理論は研究中含め多数存在するが、Googleの検索システムなどに応用されているベイズ統計学は、ビッグデータを逐次的に取り込み解析ができるため大量のデータを扱う機械学習と親和性が高く注目を集めている。

AI技術は進化している一方で、十分な成果を出すためには非常に多くのデータを保管するための記憶装置と膨大な計算を行える高性能なハードが必要である。

5)古典コンピューター、スーパーコンピューター、AI、量子コンピューターの比較

【図表12】古典・スパコン・AI・量子コンピューター比較一覧表

出典:筆者作成

量子コンピューターは、理論上データ量が膨大になった場合でも、消費電力を抑えつつ、現実的な時間の中での高速計算を可能としており、従来コンピューターの課題を解決する存在として期待されている。一方で、いずれも計算をするためのものには変わりなく、創造性や感情など計算式などで表せないようなものは、この先も人間特有のものであると現状考えられている。

3. 量子コンピューターの現状と、問題点

1) 量子コンピューターについて

【図表13】量子コンピューターの発展の歴史

出典:筆者作成

1980年代以降、量子コンピューター開発が盛り上がりを見せ始めているが、古典コンピューターの開発時系列を踏まえると、現状は黎明期から成長にかけてのフェーズであると考えられる。

2) 動作原理について

【図表14】古典ビットと量子ビットについて

出典:NEC

コンピューター上では情報の最小単位を「ビット」で表すが、従来コンピューターと量子コンピューターにはその性質に大きな違いがある。

量子ビットの状態はブロッホ球と呼ばれる球面の1点で表すことができ、『量子もつれ』・『量子重ね合わせ』の原理、そして波と粒子の性質を併せ持つといった量子の性質を使うことで、量子コンピューターの処理に適した問題に対しては、従来のコンピューターより大幅に削減した時間で解を導き出せ、消費電力の観点でも優れている。

3) 量子コンピューターの必要性

【図表15】量子コンピューターの必要事情

出典:筆者作成

量子コンピューターは従来式のコンピューターと違い、量子力学の原理を採用しているため、既存のコンピューターが抱える高性能化の限界と、データ処理量の増加に相関して生じる消費電力などの問題解決を期待されている。また、量子コンピューターの特徴を生かせるアルゴリズムが既に発見されている上、理論上超高速並列処理(計算ステップが削減されることが可能であるため、AI技術などビッグデータを用いた情報処理)において強みがあり、その必要性がますます高まっている。

4)    量子コンピューターの活用領域

【図表16】量子コンピューター活用領域

出典:科学技術・イノベーション事務局をもとに筆者作成

出典:各社HPなどを基に筆者作成

量子技術によって価値が創出されると期待される領域は、創薬や材料科学といった従来スーパーコンピューターなどがシミュレーションを行っていた分野から、物流や生活サービスまで多岐にわたると想定されている。特に、量子コンピューターに適したアルゴリズムが見つかっているシミュレーション、暗号、機械学習、最適化、検索という分野においては、理論上スーパーコンピューターの処理時間などを大幅に削減できると期待されており、大いに関心が集まっている。

【図表18】材料開発での量子コンピューター活用イメージ

出典:各社HPなどから筆者作成

活用領域の中でも、特に産業界に与える影響が大きいと考えられる“材料開発”における具体的な活用イメージは上記の通りである。従来、属人的な経験などに頼りながら、材料候補を探し、実験室で繰り返し検証を行い、その結果をもとに膨大な時間をかけた末、実用化につなげていたが、量子コンピューターを活用することで、高速で大量のデータの絞り込みを可能とし、属人的なプロセス及び大幅な時間を削減することができると考えられている。

5) 現在の開発状況や課題について

3-5-1 量子コンピューターの分類

【図表19】量子コンピューターの主な分類 【図表20】ゲート型とアニーリング型比較 

出典:各種HP資料を基に筆者作成   出典:NTT Dataを基に筆者作成 

出典:日本総研

量子コンピューターは、計算した解の取り出し方や用途などの違いで、アニーリング型とゲート型という二つの方式に分類されるが、どちらの方式においても主流の素子は超電導である。

アニーリング型は組合せ最適化問題に特化した方式であり、基礎理論を提唱したNECや実機をいち早く開発したD-wave Systems(カナダ)がリードしている状況である。実用化に向けての実証実験などが進んでおり、最適化問題をエネルギー関数として定式化し、最小化した解をその答えとして測定するといった解法手順を特徴とする。

一方で、ゲート型は汎用計算が理論上可能とされるため、世界的なIT大手企業やスタートアップ企業が開発競争に参入している。先に述べた通り、既にいくつかのアルゴリズムが発見されており、その活用領域は多岐にわたると期待されている。課題に対して、適切なアルゴリズムを検討し、それに合わせて量子回路を組み立て、量子ビットに対して様々な変換操作(正しい解となるように確率を増幅するなど)を行って計算をするといった解法手順を特徴とする。

いずれの方式も産業化するための人材が不足しており、特許紛争などを見据えた法的整備や企業、機関に対する支援体制の整備など、取り巻く環境においても多くの共通する課題がある。

3-5-2 量子アニーリング型の実用例とその課題

【図表22】ナップサック問題

出典:日本総研

 

アニーリング型は、総価値を最大化するような問題の解決を得意としており、金融におけるポートフォリオ最適化や、配送計画、人員配置、生産計画などの最適化などへの実用化が検討されている。

アニーリング型の現状における課題として、先に述べたゲート型と共通する課題はもとより、コヒーレンス(量子重ね合わせ状態を保てる時間)や各ビットの結合に制限があるといった実機上の課題に加え、用途が限定的であり、また実証実験が少なく、企業においてもコストや効果を分析することが難しいといった点も考えられる。

3-5-3 量子ゲート型の開発状況およびその課題

【図表23】5大方式比較一覧

出典:公表資料などより筆者作成

ゲート型には、量子ビットを実装する手法として複数の方式があり、上記の五つの方式においては既に実機が開発されている。各方式はそれぞれ一長一短があり、どの方式がスタンダードになっていくかはまだ決まっていないため、熾烈(しれつ)な開発競争が繰り広げられている。

米国は各方式に主要プレーヤーがおり、スタートアップ企業も多数勃興(ぼっこう)している。一方、中国は、政府系ファンドが支援をしている中国初の量子コンピューター開発会社である中国本源量子が開発を進めており、国家が戦略的に投資を行っていることがわかる。

日本についても、理化学研究所と富士通、日立、(NEC)が主要プレーヤーであり、超電導・光・シリコンの方式で開発を行っている。

幅広い用途への活用が期待されているため、実用化は先ではあるがアニーリング型以上に国家や企業は投資を行っている。一方で、先に述べたアニーリング型、ゲート型に共通の課題に加え、ゲート型には古典コンピューターと異なりノイズが伝搬する特性などがあり、量子状態が壊れやすいので、有効な解を取り出すためのエラー訂正技術の進展が必要である。加えて、優位性の確保のためには、有効なアルゴリズムを更に発見していく必要があると考えられる。

3-5-4 国別投資状況

【図表24】

出典:公表資料を基に筆者作成

各国とも多額の予算を確保しており、量子関連の国家戦略を打ち立てるなど重要度が非常に高い認識であることがうかがえる。米国は関連法の整備を既に行っており、EU(欧州連合)と中国は量子通信インフラで大きな成果を上げているなど国ごとに特色があるといえる。 

4.研究拠点など及び、開発企業の動向について

1) 研究拠点、論文数について

【図表25】量子技術論文の国別著者数 

出典:CRDS 

【図表26】日本の量子技術開発体制 

出典:科学技術・イノベーション事務局

米国・中国は研究機関を中心に開発を進めているが、拠点ごとに専門分野が異なる体制である。一方、日本は理化学研究所を中核組織とし、各技術の研究者などが同施設を利用するといった体制の違いがある。これは論文数や特許数で後れを取っている面があるため、中核組織の整備を進めることで促進を図る意図があると考える。

国別著者数も、米国・中国が優位。人口の違いはあるが、研究者の数や論文の量は競争力の源泉と置き換えて考えられるため、人材育成は日本の大きな課題と考えられる。米国は、古典コンピューターの黎明期から、一研究者(学者)から創業するというキャリアパスが存在し、中国は国からの手厚い保護がある一方で、日本は一部の研究機関、一部の大手企業中心に開発が進められており、魅力的なキャリアパスが見えづらい点が差と考える。

 2) 特許数について

【図表27】国別量子関連技術特許件数   【図表28】AI関連特許件数上位

出典:IPR  daily公表資料を基に筆者作成  出典:Statistaなどの公表資料を基に筆者作成

【図表29】量子技術特許数トップ機関(2021年時点)

出典:CRDS公表資料を基に筆者作成

特許件数は米国・中国・日本の順に多く、AI関連では中国が優位である一方で、量子関連技術については特許数や実績含め米国が一歩リードしている状況と考えられる。

米国は、IBM、Googleなどの大手IT企業に加え、MIT(米マサチューセッツ工科大学)などの大学が特許数上位を占めており、特許の内容を踏まえると、量子コンピューター、量子基礎技術関連に強みがあると考えられる。

中国は、国立の研究機関・大学が上位を占める構造。特許数トップ30の機関数は、中国が一番多いことからも各研究拠点が競うように積極的に特許申請を行っている。また、量子暗号・通信に力を入れていることがわかる。

一方で、日本はNTT、NEC、富士通などの大手IT企業のみが上位であり、古典コンピューターから量子コンピューターに至るまでこの構造が変わっていないものと考える。

3) 企業分析について

4-3-1 日米大手IT企業分析

【図表30】日米企業概要比較

出典:各社IR資料より筆者作成

主要企業においては、ゲート型及び超電導型が開発の主流であると考えられる。また、利用方法はクラウド方式が一般的であり、実機1台にかかる費用を鑑みると、今後もクラウド方式が中心に発展していくものと想定できる。

【図表31】日米企業財務分析

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出典:各社IR資料より筆者作成

日本企業の海外売上比率は20~30%台で推移している一方で、米国企業は50%超で推移しているが、これはグローバル戦略や商品及びサービスの汎用(はんよう)性の違いが理由として考えられる。また、売上高研究開発費率から、米国企業が日系企業に比べ、研究そのものや研究者等の人材への投資に積極的であることがわかる。

これらの違いは、世界的な拡がりが見込まれる量子コンピューター事業において、人材の求人力などへの差が生じ、ビジネス上重要である標準化・汎用性をもたらすような発見で日本が後れを取る可能性につながるものと考える。

4-3-2 スタートアップ企業分析

【図表32】量子技術へのVC投資額推移

出典:公表資料を基に筆者作成

量子技術に対するVC(ベンチャーキャピタル=将来的に高い成長が見込まれる未上場企業に投資を実行する会社)の投資額は右肩上がりで増加傾向にあり、スタートアップ企業にとっては追い風的な環境下が続いていると考えられる。ここでは、量子スタートアップ企業として世界でも有数な企業である、Rigetti社とIonQ社を題材に比較分析を行っていきたい。

【図表33】企業沿革

出典;IR資料を基に筆者作成         

Rigetti社は、大手IT企業が開発競争に参入している超電導方式の開発を行っているため、 ライバル関係にある大手IT企業との連携が難しく、エネルギー省との契約など国や大学との繋(つな)がりを重視していることがわかる。

一方で、IonQ社は大手IT企業が参入していないイオントラップ方式の研究を行っており、またその方式の先行的立場にいるため、GAFAなどとの提携が進められていると考えられる。

Rigetti社とIonQ社はともに米国発の量子コンピューター専業のスタートアップ企業であり、両社ともシード期、上場前の時期に順調に資金調達を行えている。加えて、SPACとの統合を通じて上場し、多額の調達を成功させており、量子コンピューター関連事業においても米国のスタートアップ企業のロールモデルが既に誕生しつつあるといえる。

【図表34】Rigetti社とIonQ社の財務分析について

出典:各社IR資料を基に筆者作成

いずれの企業がイニシアティブをとれるかは不明であるが、Rigetti社よりIonQ社の方が、売り上げや自己資本比率などなどからもわかる通り、財務面でより安定している状況と考えられる。

ブレイクスルーを起こすための将来に向けた多額の投資を行う必要性がある一方で、事業継続のため、投資家を意識した目先の成果の創出や安定した財務基盤の確保を行う必要があるため、これらのスタートアップ企業は非常に難しい経営判断やバランス感覚を求められているものと考えられる。

6.まとめ

①コンピューターとは数学や物理の法則を使って計算をする機械であり、ハードウェア・ソフトウェア双方の発展が必要である点は量子コンピューターにおいても同様である。

②古典コンピューターは、米国のスタートアップ企業などを中心として半導体技術の進化とともに発展を遂げ、様々な形で現代社会に広く深く浸透している。

③スーパーコンピューターは、インターネット普及によるデータの蓄積や、ハード性能の進化を一因として、社会や産業にインパクトを与えるシミュレーションを行ってきたが、半導体微細化技術の限界や消費電力といった課題に足元直面している。

④AI技術も、新たなアルゴリズムの発見や、コンピューター性能の進化などを追い風に近年発展を遂げている。また、ビッグデータを取り扱うディープラーニングなどの機械学習において、十分な成果を出すためには膨大な計算を行える高性能なハードが必要であり、量子コンピューターがそれらの課題を解決する存在として期待されている。

⑤量子コンピューターは従来コンピューターとは異なった原理を採用しており、高速処理が難しい問題や消費電力といった課題の解決を理論上可能としている。ただし、量子コンピューターもAI技術や従来コンピューター同様に、感情や創造性などは表せられない。

⑥量子コンピューターは、アニーリング型とゲート型に分類され、様々な企業・機関で開発競争が行われているが、どの方式がスタンダードとなるかは現状未確定である。

⑦AI技術、量子技術ともに米中の競争が激化しており、日本は特許数などを始めとして開発状況で後れを取っている状況である。これらの状況の打破には、日本の企業体が研究開発分野への積極的投資を行い、国際競争力をもつ人材の確保や育成、そして研究体制を整えていくこと、加えて、スタートアップ企業が継続的に開発を継続できるように、VCなどからの調達環境を構築するとともに、学術機関との連携体制をより強化していく必要があると思われる。

※「ニュース屋台村」過去の関連記事は以下の通り

第189回「AIと人間は何が違う?-AIを正しく恐れよう」(2021年3月12日付)

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