引地達也(ひきち・たつや)
コミュニケーション基礎研究会代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長などを経て、株式会社LVP等設立。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。
◆初詣の列
引っ越し先の家屋のアンテナ不備なのか、引っ越した年末以来、テレビが映らない。年末年始の騒々しい番組を見ることもないので、そのままにしておき、新たな街の空気を楽しむことにした。テレビとともに心の雑音が消えたようで心地が良い。そして年が明けて近所の神社に元朝参りにいくと、夜店もない静かな佇(たたず)まいの、普段は通り過ぎてしまうような神社なのに、長蛇の列になっている。
よく見ると、お宮前で1人か2人ずつ、木の棒の先に折った白い紙を束ねた祓具(はらえぐ)を左右に振り、お祓(はら)いを施している。地元自治会の方々が参拝者に祓具でのお祓いとお神酒(みき)を授けるのが、この神社の仕来(しきた)りらしい。寒空の中、人は静かに列をなし、この仕来りに従う。
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