引地達也(ひきち・たつや)
仙台市出身。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長などを経て、株式会社LVP(東京)、トリトングローブ株式会社(仙台)設立。一般社団法人日本コミュニケーション協会事務局長。東日本大震災直後から被災者と支援者を結ぶ活動「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。企業や人を活性化するプログラム「心技体アカデミー」主宰として、人や企業の生きがい、働きがいを提供している。
◆崩壊寸前
「どうにかしてくれ」
美由紀さんは、東日本大震災後に「暴れだした」久人君のその行為の根っこにあるのは、心の叫びであると受け止めている。他者とのコミュニケーションが苦手な息子にとって、そのように表現するしか、自分を表現する手立てがないのだ。震災による環境の変化を「恐れ」と受け止め、それを発露する術を知らない久人君に美由紀さんはただひたすらに「大丈夫だからね」と言うしかなかった。
「緊急事態」として状況を知った保健師からの紹介で病院を訪れたが、明確な答えはなく、そこで受けた処方箋(せん)でも効果はなく、修羅場の日々は続いた。
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