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日本(ジパング)見聞録
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第219回

6月 03日 2022年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住24年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

イタリア・ベネチアの商人であったマルコ・ポーロ(1254-1324)がアジア事情を記した『東方見聞録』。この『東方見聞録』によれば、「黄金の国ジパング」は中国の東の海上1500マイルに浮かぶ島国で、莫大(ばくだい)な富を生み出す。その国の宮殿や民家は黄金で造られ、国中に財宝にあふれている。また、人々は仏教を信じ、礼儀正しく穏やかである。日本のことがこう書かれているようである。この『東方見聞録』に刺激されて、ヨーロッパの多くの冒険家がアジアを目指すことになり、世界は「大航海時代」を迎える。さて今回、私は2年ぶりにタイから「黄金の国ジパング」に一時帰国した。「黄金の国ジパング」はこの2年間のコロナ禍の影響を受けてどのように変貌(へんぼう)したのであろうか? 記事全文>>

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西欧文明は脱皮できるか
『週末農夫の剰余所与論』第29回

6月 01日 2022年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o株式会社エルデータサイエンス代表取締役。元ファイザーグローバルR&Dシニアディレクター。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

今年の農作業は遅れ気味だ。雑草と腰痛のがまん比べになっている。筆者の農園は寒山地にある。春にはきれいな蝶が訪問する。雑草の花であっても、蝶たちにはごちそうなのだろう。雑草にも蝶にも、生物学的な分類の名前はある。個体識別をするための固有名は無い。名前や個体番号など、人間がいなければ、必要ない。雑草と蝶は立派に個体識別している。農園では、水ナス、長ナス、などナスが4種類、ピーマンも4種類、カボチャ3種類など、多品種少量生産を心掛けている。少量というよりも、ランダムな気候変動によるリスクを最小化する、運まかせの素人農法だ。素人農法とはいっても、農業試験場の大先生から伝授していただいた、素人農法の奥義でもある。苗の種類によって、微妙に収穫時期が異なるし、無農薬農法では、害虫被害も最小化される。害虫を狙うカエルなどの同居者の量と多様性にも影響があるから、多品種少量生産は、まさに奥義なのである。作付けとしては、大先生の教えに従って、年間100種類をめざしている。20年経験を積んでも、半分程度しか実現できていない。自家での、種の採取と管理を工夫すれば、100種類も夢ではない。しかし、温室や冷蔵庫など、道具への投資は、自分の時間が管理できるようになってからの課題だ。腰痛の問題もある。今のところ、夢への投資にも限りがあるということなのだろう。 記事全文>>

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バイデンは親会社の社長? 首脳会談から見える日米同盟の現実
『山田厚史の地球は丸くない』第213回

5月 27日 2022年 国際

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

他人の家を訪れる時、普通は玄関から入る。勝手口から入る人はいない。日米首脳会談のため日本にやってきたバイデン大統領は、玄関口である羽田空港から入らず、在日米軍横田基地(東京都福生市など)に降り立った。米国の軍や政府関係者が勝手に使う米国専用の出入り口だ。

ヘリコプターに乗り換え、これも東京都23区内で唯一の米軍ヘリポート基地「赤坂プレスセンター」(東京都港区六本木7丁目)に到着。分厚い鉄板で覆われた大統領特別車で都心に繰り出した。 記事全文>>

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「円安は日本経済にとってプラス」は本当か?
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第56回

5月 23日 2022年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

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オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

4月の消費者物価(生鮮食品を除く総合)が、前年同月比2.1%に達した。世界的な資源価格や穀物価格の高騰が、国内にも波及している。為替市場では、内外金利差の拡大を背景に円安が進んだ。

それでも日本銀行は、異次元緩和継続の姿勢を崩さない。①物価のプラス幅はいずれ縮小すること②円安は日本経済にとって全体としてプラスであること――を理由とする。

為替相場に関する日銀の見解は「経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」というものだ(4月28日黒田東彦総裁記者会見)。

これに「円安は全体としてプラス」との主張を重ねれば、日銀は足元の円安進行をおおむね「ファンダメンタルズに沿った動き」と見なしているということだろう。そうでなければ、辻褄(つじつま)が合わない。

しかし、円の実質実効為替レート(注)は、1971年秋以来の円安水準にある。本当にファンダメンタルズに沿った動きと言えるだろうか。為替相場を規定する「経済のファンダメンタルズ」とは何か。「円安が日本経済にとってプラス」は本当か。 記事全文>>

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ウクライナ戦争から私たち日本人が学ぶべきこと
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第218回

5月 20日 2022年 国際

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住24年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

ロシアがウクライナへ軍事侵攻を始めてから2か月以上が経過した。核を保有する軍事大国であるロシアがウクライナ侵攻を決行したのが2月24日。「軍事力で全く劣勢にあるウクライナは大国ロシアの前に1か月も持たないのではないか」。こうした大方の予想を裏切り、ウクライナ側の抵抗は続く。日本のマスコミは連日、ロシアの極悪非道な戦争犯罪を糾弾する。また政府・自民党からはウクライナ戦争の教訓として「軍事費の増額」や「自衛隊の活動領域の見直し」などの議論が出ている。

こうした議論の方向性を見ると、「またしても日本人は重大危機に際して思考停止状態に陥ってしまった」としか私には思えないのである。誤解を招くといけないので、あらかじめ宣言をしておこう。私は決して「不戦論者」でも「理想主義者」でもなく強烈な「愛国者」である。だからこそ日本が間違った方向に進むことに強い危機感を持っている。「第3次世界大戦」や「核戦争」が実際に起こる可能性すらある現在のウクライナ戦争。私たちはこの戦争から何を学び、何を準備するべきなのだろうか? 今回はウクライナ戦争について、マスコミではあまり取り上げられない視点での論考を試みたい。 記事全文>>

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日米物価格差の背後にある社会規範、長期金利を弾力的に~「物価目標2%はグローバルスタンダード」という錯覚(その2、完)  
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第55回

5月 16日 2022年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

oオフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

前回(第54回)のコラムで、次のように述べた。

(1)日米の物価上昇率には「一定の格差をもって連動する強固な関係」がある。1978年以降、日本の物価は一貫して米国を下回っている。上昇率が2%を下回るようになった1993年から2021年までの年平均格差は、1.8%だった(いずれも消費税導入・同税率引き上げの年を除く、参考参照)。

(2)この関係は今も変わらない。日本の物価が4月以降2%台に達する可能性が出てきたのは、米国が目標の2%から大きく外れて高騰したことと相関している。

(3)今回の物価上昇は典型的な輸入インフレであり、望ましくない。日本銀行は長期金利の誘導レンジ「ゼロ±0.25%」を堅持する姿勢を崩さない。しかし、これは内外金利差の拡大を通じて円安を促し、「望ましくない物価上昇」を加速させる。異次元緩和で失われた金利機能を回復させるためにも、長期金利の柔軟な変動が必要である。 記事全文>>

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「日銀は政府の子会社」言葉の軽い元首相
『山田厚史の地球は丸くない』第212回

5月 13日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

安倍晋三元首相の「放言」が止まらない。今度は「日銀は政府の子会社だ」と言い放った。政府は1000兆円を超える長期国債の重圧を抱える。大借金を増やしたのは他ならぬ安倍元首相だが、「満期が来たら借り換えても構わない。心配する必要はない」と他人事のような口ぶりだ。

安倍は2012年12月、首相に就任する前から「デフレは市場に出回る資金が足りないから起こる」という一部の学者の主張を鵜呑(うの)みにし、自民党総裁選で「インフレ期待を起こすことでデフレを退治する」と主張していた。銀行が保有する国債を日銀に買い取らせ、潤沢な資金を市場に供給すればデフレは解消すると言っていた。

白川方明(まさあき)総裁をはじめ当時の日銀は「国債買い取り」に慎重だった。お札を刷って政府の借金の穴埋めをするのは、日銀がしてはならないことの「一丁目一番地」である。

財務省も心配した。国債乱発に拍車がかかり、財政はますます節度を失うことが目に見えていた。

安倍は、日銀の総裁人事に手を付け、政治主導を鮮明にした。安倍の主張にシッポを振った元財務官僚・黒田東彦(はるひこ)を総裁に据える。黒田が打ち上げたのが「異次元の金融緩和」。国債を積極的に買い上げることで日銀が発行する通貨が銀行を通じて市場に流れ出る、と考えた。

黒田は「日銀マネーを2倍にして、2年で物価を2%上昇させる」と宣言した。ところが9年経っても成果は出ない。

異次元緩和が失敗したことは5年前からわかっていた。本来なら黒田は責任を取る立場だったが、辞めなかった。辞めれば安倍の責任が明らかになる。 記事全文>>

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「リベラル能力主義」について考える(その2)
『視点を磨き、視野を広げる』第59回

5月 09日 2022年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに―リベラル能力主義が持つ問題

・リベラル能力資本主義

米国の経済学者ブランコ・ミラノヴィッチは、その著書『資本主義だけ残った―世界を制する資本主義の未来』において、米国型の資本主義を「リベラル能力資本主義」と呼んでいる。

―「リベラル」は、すべての人に機会の平等が保証されるべきという考え方だ。「能力(主義)」は、誰もが能力と努力によって評価されることをいう。したがって機会の平等が必要だ。両者は基本的な価値観(法の支配、人権、民主主義)のもとで一つのシステムとして機能し、能力主義的平等を求める。

―「資本主義」は、グローバル市場の中で活動する市場志向の資本主義である。テクノロジーを武器に市場システムの中での効率性(生産性)の追求を特徴とする。したがって理性主義的なリベラル能力主義と相性が良い。 記事全文>>

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日本一時帰国顛末記(その2・自宅に戻って)
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第217回

5月 06日 2022年 社会

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住24年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

3月初旬、2年ぶりにタイから日本に帰ってきた。新型コロナウイルスのまん延により、この2年間にわたって世界中で厳しい入国制限が行われた。「勤務地であるタイを一度離れるといつ戻れるかわからない」という恐怖心で、私の帰国もままならなかったのである。コロナウイルスの弱毒化とワクチン接種の進行により日本の入国制限も緩和され、私が帰国した今年3月からは、ワクチン3回接種済みのタイ入国者の隔離制限は撤廃された。大変幸運な条件で私と妻は帰国した。

前回第216回でご紹介した通り、私たちが搭乗したタイ航空機が成田空港に到着したのが午前7時半。その後、検疫作業などで入国審査が済むまで3時間強かかり、私たちが空港の外に出られたのが午前11時過ぎだった。用意してあった自動車に乗り込み、途中のスーパーマーケットで少し買い物をして午後1時前に自宅にたどり着いた。乗客が睡眠不足で目を赤くするところから、俗に「レッドアイ」と呼ばれる夜行便(深夜発明朝着便)で日本に到着した私たちは、自宅に帰り着くと倒れるように眠り込んだ。気がつくと夜の7時。すっかり外は暗くなっていた。取りあえず電気、ガス、水道は使えそうである。風呂にゆっくりつかり、スーパーで買い込んだサンドイッチを食べてその日はまた寝てしまった。 記事全文>>

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恐竜新時代から人類新時代へ
『週末農夫の剰余所与論』第28回

5月 04日 2022年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o株式会社エルデータサイエンス代表取締役。元ファイザーグローバルR&Dシニアディレクター。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

今年の農作業が始まった。びっくりした。昨冬、収穫を忘れたパースニップ(白ニンジン)が、雪の下で立派に育っていた。パースニップは、英国のクリスマスに不可欠な野菜で、東京では1個1000円程度の高価な野菜だ。10年間、様々な種類のパースニップの種を試したけれども、発芽率が悪く、なかなか肥大化しない。日本の夏が、高温多湿で、パースニップの栽培は難しいと、あきらめていた。遅れて秋に発芽した小さな株が、早春に肥大化する、偶然の発見だ。クリスマスにはタイミングが合わないけれども、一歩前進できた。 記事全文>>

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