山口行治(やまぐち・ゆきはる)
株式会社エルデータサイエンス代表取締役。元ファイザーグローバルR&Dシニアディレクター。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
筆者のライフワークとなるかもしれない「データ論」にむけて、(1)目的(2)方法(3)全体構想――と準備を進めてきた。今回は(4)問題設定、データ論の準備の最終回となる。データ論の目的は、機械文明の限界を乗り越えて、データ文明が開花するための技術思想を模索しながら、現状では解決の見込みのない問題群に「データ」技術によってアプローチすることだ。その近未来の技術思想を「データサイクル」と命名している。データ論の方法は、「データサイクル」という技術思想を、具体的に構築するための方法だ。ウイルスはデータとして生きているという仮説から、ランダムなウイルスのあり方を数学的に解析するための方法を模索する。ランダム行列の理論が出発点となる。「データ論」の主役は「ランダムなひとびと」で、「ランダムなひとびと」の生活は常在性ウイルスの動態としてデータ化できると仮定している。マイクロバイオームの紹介として、『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』(アランナ・コリン、河出書房新社、2016年)というベストセラー本があるが、その細菌はウイルスと「共存・共生・共進化」している。 記事全文>>