引地達也(ひきち・たつや)
コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。
◆町を生かすキーワード
平日の夕暮れ。海を望む高台へ向かう坂道の途中に2人のおばあちゃんと幼い女の子が家の軒先で佇(たたず)んでいる。おばあちゃんと孫の間に流れる、ゆったりとした時間。私が目の前を高台に向けて歩いていくと、女の子が「おじちゃん、どこ行くのかなあ」とおばあちゃんの顔を見上げる。私は「上の方に行くんだよ」とほほ笑みながら、語り掛けるが、その道を上に行く人はめったにいないらしく、不思議そうな顔をしていた。
関東地方の海辺を望む高台と小さな漁港を抱えるこの町は、産業がなく、観光資源も乏しく人口減に悩んでいる。これは全国の地方が共通に抱える問題だが、今月、この町は「人口ビジョン」「まち・ひと・しごと創生総合戦略」なる有識者会議を経た調査結果を出した。
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