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AKB48も小さな町もすべて「ケア」につながる
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第74回

4月 01日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆町を生かすキーワード

平日の夕暮れ。海を望む高台へ向かう坂道の途中に2人のおばあちゃんと幼い女の子が家の軒先で佇(たたず)んでいる。おばあちゃんと孫の間に流れる、ゆったりとした時間。私が目の前を高台に向けて歩いていくと、女の子が「おじちゃん、どこ行くのかなあ」とおばあちゃんの顔を見上げる。私は「上の方に行くんだよ」とほほ笑みながら、語り掛けるが、その道を上に行く人はめったにいないらしく、不思議そうな顔をしていた。

関東地方の海辺を望む高台と小さな漁港を抱えるこの町は、産業がなく、観光資源も乏しく人口減に悩んでいる。これは全国の地方が共通に抱える問題だが、今月、この町は「人口ビジョン」「まち・ひと・しごと創生総合戦略」なる有識者会議を経た調査結果を出した。
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「当事者の声」を聴けない為政者たち
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第73回

3月 25日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆おうかがいに無視

「保育園落ちた。日本死ね」との匿名ブログの発言は国会で取り上げられ、結果的に待機児童の問題を浮き彫りにし、政府からは「具体的な対策」を引き出すことになった。当初、安倍晋三首相は匿名ブログの内容には「確認しようがない」と否定的な反応であったが、問題の広がりに、その根深さを実感したのだろう。

当初の政府対応には、「取るに足らない」という庶民へのスタンスが透けて見える。それは、私も一人の「就労移行支援事業所」という福祉職員として現行の制度や問題点を指摘し、よりよい制度設計をお話ししたいと、「議員さん」に申し入れても、ほとんどがうまくかわされるか、無視されるという対応に直面したことから、よく分かる。
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プロスポーツはなぜ健全であるべきか
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第72回

3月 18日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆指針がなくなった

健全な組織とは何か。プロ野球・巨人の野球賭博問題から広がるチーム内での「声だしご祝儀」「ノックでエラーしたら罰金」などの「不正」にふれて、あらためて自分が関わる精神疾患者向けの施設というコミュティーでありチームへの影響を考えている。

世の中で「不健全」とされている今回のプロ野球チームの行動により、私は障害者の就労移行支援を行う者として、彼らを支える規範や与えるべき生きる指針が一つなくなった、と重く受け止めている。
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3月11日を語るメディアが当事者に近づくために
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第71回

3月 11日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆上から目線報道

5年前の3月11日から多くのものが変わった。のどかな町並みだった宮城県南三陸町の中心部は全体がかさ上げされて町の丸ごとが古墳になった異様さで、震災の象徴のひとつである鉄骨だけの防災庁舎は古墳の狭間で息苦しい姿を見せている。使われていない復興予算と「復興が進まない」という声の矛盾は巷(ちまた)では解消されていない様子だ。メディアにとっては、福島の原発被害に関する報道が「真実を伝えていない」と指摘されたまま流れた月日でもある。

報道への不信感は、政府発表など権威からの発信を鵜呑(うの)みにしているとの印象を与えたまま、当事者や現場の声が反映されていない、とい意識から抜け出せていない。ニュースや真相は現場にあり、取材は、現場や当事者にどれだけ迫れるかが、大きなポイントなはず。しかし構造上、全国紙は被災現場においては常によそ者である。だから安住の地、東京というホームポジションで大局を語る。大きな羅針盤は混沌(こんとん)の中でこそ、その役割を果たすから、大局も大切なこと。しかし市民からは「上から目線」と嫌われる原因でもある。
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「福祉」と「経済」の流れる時間の違いを考える
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第70回

3月 04日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆「悪い」のではなく

2月25日に東京都の独立行政法人主催で開催された障がい者の就労支援に関するセミナーでのこと。就労支援の支援者や受け入れ側の事業者との意見交換で、受け入れ側となる某中堅生命保険会社の人事担当者による発言の端々が気になった。

「(精神障がい者の)欠席率が高く定着率が悪い」「作業効率が悪く、能率上げる対応が必要」「コミュニケーションの問題が多い」など。障がい者雇用をする企業の率直な言葉なのだが、これをどう捉えるかで、その人の障がい者に対する視線が決まってくるような気がする。
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自殺対策基本法を身近なものにするために
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第69回

2月 19日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆対策の次なるステップ

2006年に施行された自殺対策基本法が今国会で改正される見通しである。10年が経過し、自殺者3万人以上の時代から2万人台を維持していることを「成果」とし、さらに成果を追求することを念頭に自殺対策を国や自治体の義務と定める内容で4月施行の予定だ。特に自治体ごとに自殺対策に向けた計画づくりが課せられることになりそうだが、実効性の高い計画には、企業や地域コミュニティーなど、自殺の現場に近い市民との連携が求められるであろう。

本稿以前の記事「身近な自死と25000人を考える」で指摘したのは、「6年連続の減少と18年ぶりに2万5千人以下」という対策の成果に惑わされることなく、「2万5000人を塊としてみないこと」「1人1人の死の積み重ね」ということに思いを馳(は)せること、であった。
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清原容疑者の覚せい剤問題で浮かび上がる精神病院への偏見
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第68回

2月 12日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆「精神病院」への偏見

覚せい剤取締法違反(所持)容疑で逮捕された清原和博容疑者に関する報道が伝えているのは、「スーパースターの凋落(ちょうらく)ぶり」であり、それは精神的な破滅と処理されているものがほとんどのような印象がある。この報道に付随もしくは通底してくるのは送り手(メディア側)が持つ精神科の病院や精神疾患者への偏見である。メディア側がそんなつもりはなくても、それは編集に関わる者の矜持(きょうじ)として問われる心根にある歪(ひず)みであり、そこに私は恐ろしさを感じている。

例えば週刊新潮1月28日号は、昨年5月に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、9月に執行猶予付き判決が下された人気歌手、ASKAさんの入院について報じている。その病院について同誌は「入院先は、JR高尾駅から車を走らせた場所にある。日中も静寂に包まれるこの施設は、閉鎖病棟を備えた『精神科病院』」と記す。何気ない説明だが、隔離された場所にある事実を伝える背景に「私たちとは別の世界」という感覚がちらつく。さらに記事では、ASKAさんの幻覚症状を受けて精神科医のコメントとして「覚醒剤依存症からさらに進んだ、覚醒剤精神病の状態だと言えます。その特徴は止めどない猜疑心の拡大で、まさにASKAさんの症状そのものです」と説明し、これを受けて同誌は「芸能界復帰は、絶望的か。」と結んだ。
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法定雇用率に社会は追いついていない
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第67回

2月 05日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆半数以上が赤信号

企業や公共機関・団体などの従業員数に応じて障害者雇用を義務付ける割合である法定雇用率を遵守(じゅんしゅ)していない企業は、半数以上(2015年6月現在、以下厚生労働省調べ)の52.8%に上ることをどう考えればよいのだろうか。半数以上が守らないのはやはり赤信号をみんなで渡っている状態とも言える。

基準が高すぎるという法律・規定が悪いのか、利益優先の企業が悪いのか、世界情勢に左右される景気等の経済環境が悪いのか、障がい者への理解が進まない社会環境が悪いのか。各分野に責任は見いだせるのだが、まずは障がい者の雇用率の適用は半世紀以上も歴史があるのに、達成しているのは「半分」という事実を正しく受け止めたい。
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身近な自死と25000人を考える
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第66回

1月 22日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆遺書

年明けから訃報がもたらされた。うつ病が回復し福祉関係で働いていたはずの彼が年末、自ら命を絶った。遺骨と遺影、彼の性格をあらわす「温」の字のついた戒名が記された位牌に手を合わすと、遺族が遺書のコピーを渡してくれた。

引地さん お世話になりました もう一度会いたかったなあ
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寒風のおばあちゃんたちに慰安婦問題の解決は訪れない
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第65回

1月 08日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆解決に唐突感

昨年12月28日に戦後70年内、日韓国交正常化50周年内に滑り込むようにして日本と韓国が従軍慰安婦問題で和解した。韓国は対日関係改善の入り口としてきた経緯があり、韓国が最終的・不可逆的に解決したのは一般的には唐突感があるだろう。これに先立つ産経新聞ソウル支局長への無罪判決と外交問題に言及した裁判長の勧告読み上げは、この結末を示唆するものであった。

さらに国際政治の観点からすれば、形は違うが、日韓ともに「対米追従」外交なのは変わりなく、解決にはやはり米国の影がちらつく。6日には北朝鮮の朝鮮中央テレビが「水爆実験を行い、成功した」と発表。北朝鮮の中国を含めた北東アジアの秩序という大きな課題が浮かび上がってくる。機能が停止している北朝鮮の核問題解決を目指す6カ国協議の再開も視野に入ってくる。
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