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増税ダメならインフレで-円安放置の「調整インフレ」
『山田厚史の地球は丸くない』第215回

6月 24日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

円安が止まらない。ドルに対し、2カ月で20円も安くなった。1ドル=140円が視野に入ったが、通過点でしかない、とさえ言われる。

「円安は日本経済にとって悪いことではない」と言っていた日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁も「急激な円安は好ましくない」と、トーンを変えた。だからといって「円安防止策」を発動する気配はない。日本は無策、防戦に動かない、とみる世界の投機筋は、安心して「円売り」を浴びせる。先物市場で円を売り、安くなったところで買い戻し、差益を稼ぐという流れが定着した。 記事全文>>

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防衛費2%で覚悟すること 参議院選を前に
『山田厚史の地球は丸くない』第214回

6月 10日 2022年 政治

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

1月に始まった国会は今月15日に閉会、22日には参議院議員選挙が公示される。慌ただしい政治の現場から、日本が抱える課題が見えてきた。

苦しい財政事情などお構いなしに防衛予算の増額を決めた政権党。1千兆円を超えた国債残高をさらに膨張させる政府。急激な円安を放置し物価上昇を容認する日本銀行。国民生活に重大な影響を及ぼすばかりか、日本の針路を危うくする政策が、平然と進められようとしている。 記事全文>>

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バイデンは親会社の社長? 首脳会談から見える日米同盟の現実
『山田厚史の地球は丸くない』第213回

5月 27日 2022年 国際

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

他人の家を訪れる時、普通は玄関から入る。勝手口から入る人はいない。日米首脳会談のため日本にやってきたバイデン大統領は、玄関口である羽田空港から入らず、在日米軍横田基地(東京都福生市など)に降り立った。米国の軍や政府関係者が勝手に使う米国専用の出入り口だ。

ヘリコプターに乗り換え、これも東京都23区内で唯一の米軍ヘリポート基地「赤坂プレスセンター」(東京都港区六本木7丁目)に到着。分厚い鉄板で覆われた大統領特別車で都心に繰り出した。 記事全文>>

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「日銀は政府の子会社」言葉の軽い元首相
『山田厚史の地球は丸くない』第212回

5月 13日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

安倍晋三元首相の「放言」が止まらない。今度は「日銀は政府の子会社だ」と言い放った。政府は1000兆円を超える長期国債の重圧を抱える。大借金を増やしたのは他ならぬ安倍元首相だが、「満期が来たら借り換えても構わない。心配する必要はない」と他人事のような口ぶりだ。

安倍は2012年12月、首相に就任する前から「デフレは市場に出回る資金が足りないから起こる」という一部の学者の主張を鵜呑(うの)みにし、自民党総裁選で「インフレ期待を起こすことでデフレを退治する」と主張していた。銀行が保有する国債を日銀に買い取らせ、潤沢な資金を市場に供給すればデフレは解消すると言っていた。

白川方明(まさあき)総裁をはじめ当時の日銀は「国債買い取り」に慎重だった。お札を刷って政府の借金の穴埋めをするのは、日銀がしてはならないことの「一丁目一番地」である。

財務省も心配した。国債乱発に拍車がかかり、財政はますます節度を失うことが目に見えていた。

安倍は、日銀の総裁人事に手を付け、政治主導を鮮明にした。安倍の主張にシッポを振った元財務官僚・黒田東彦(はるひこ)を総裁に据える。黒田が打ち上げたのが「異次元の金融緩和」。国債を積極的に買い上げることで日銀が発行する通貨が銀行を通じて市場に流れ出る、と考えた。

黒田は「日銀マネーを2倍にして、2年で物価を2%上昇させる」と宣言した。ところが9年経っても成果は出ない。

異次元緩和が失敗したことは5年前からわかっていた。本来なら黒田は責任を取る立場だったが、辞めなかった。辞めれば安倍の責任が明らかになる。 記事全文>>

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中国・習近平「3選」賭けた総力戦-強権はコロナを制圧できるか
『山田厚史の地球は丸くない』第211回

4月 28日 2022年 国際

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

中国がコロナウイルスとの闘いで苦戦している。上海の都市封鎖は1週間で終わるはずだったが、1か月経った今も解除できない。ウイルスは首都・北京に広がった。封鎖には至っていないが、2000万人を対象にしたPCR検査が始まり、陽性者が次々と見つかっている。

湖北省武漢で発見された新型コロナウイルスは地球規模の感染を巻き起こし、死者はこれまでに米国で101万9000人、ブラジルで66万2000人、インドで55万2000人、ロシアで37万5000人に上っている。あちこちの国でおびただしい死亡が確認されたが、中国は4月26日現在、わずか4825人。

人口が10分の1にも満たない日本でも死者は2万9472人に上る(4月27日現在)。死者が5000人にも満たない中国の「感染防止対策」は群を抜く成功だったと見ていいだろう。 記事全文>>

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「フライパンが危ない」-ダイキン対Tansa 調査報道の静かな闘い
『山田厚史の地球は丸くない』第210回

4月 08日 2022年 社会

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

「テフロン加工」。フライパンにテフロンの被膜(ひまく)を施すと料理がこびりつかない。いまやハンバーガーの包み紙から便器まで、重宝される樹脂加工だが近年、原料物質の毒性が問題になっている。

製造工場の周辺で環境汚染・住民被害が問題化し、ダイキン工業(本社大阪市)の責任について調査報道を続ける「Tansa」(旧ワセダクロニクル)が執拗(しつよう)に追及、工場のある大阪府摂津市では市議会が動き出す事態にまで発展した。

企業の社会的責任とメディアのあり方を考える「生きた事例」として提起したい。 記事全文>>

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ロシア「協力事業」血のにおいはしないか?
『山田厚史の地球は丸くない』第209回

3月 25日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

「侵略の津波を止めるために、ロシアとの貿易禁止を導入し、各企業が市場から撤退しなければならない」

ウクライナのゼレンスキー大統領が3月23日に「オンライン国会演説」で語った一節だ。何を言うのか注目されたが、耳に残ったのは「制裁」という言葉。貿易を減らし、企業は撤退してほしい――。岸田政権は痛いところを突かれたのではないか。ロシアが外貨を稼ぐ石油・天然ガスのビジネスで日本は手を組んでいる。米国も英国もロシア産の原油を輸入禁止にした。ドイツは天然ガスパイプライン「ノルドストストリーム2」の開業を諦めた。EU(欧州連合)の政策執行機関・欧州委員会は、ロシアから石油・ガスの輸入を段階的に減らすことを決めている。日本政府は、いつまで知らぬふりを続けていられるのか。 記事全文>>

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経産省の北方外交の挫折-終わっていた領土交渉
『山田厚史の地球は丸くない』第208回

3月 11日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

「北方領土は我が国固有の領土」。3月7日の参議院本会議で岸田文雄首相はこう述べた。安倍政権の末期から、この見解は政府から消えていた。交渉相手をおもんぱかって、「我が国の領土だ」と言えなかったのである。

やっと「当たり前のこと」が言えるようになったのは、領土交渉を考えなくてもよくなったから。つまり、北方領土を取り戻す交渉は「終わった」ということである。

ロシアがウクライナに侵攻し、「領土交渉どころではない」という事態は、交渉当事者にとって「もっけの幸い」かもしれない。「ロシア排斥」が世界で叫ばれる今、「交渉手じまい」はやむを得ない、と誰もが考えるだろう。

だが、ロシアとの交渉をつぶさに見ると、「北方領土を取り戻す」という外交は数年前にすでに終わっている。 記事全文>>

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ウクライナ「相互依存」の終わり-自ら傷つく「経済制裁」の危うさ
『山田厚史の地球は丸くない』第207回

2月 25日 2022年 国際

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

「力による原状変更は許されない」。耳にタコができるほど聞いた言葉だが、ロシアのウクライナ侵攻で、なんとも空疎な言葉になってしまった。

ロシアのプーチン大統領は、その振る舞いを「国際法違反ではないか」と記者会見で聞かれた時、「では、あなたに聞きたい。西側の国は国際法を守っていると思うか?」と切り返した。

オレのやり方は国際法なんて関係ない、アメリカはもっとひどいことをやっているじゃないか、と居直っているように見えた。確かに一理ある。イラクやアフガニスタンに攻め込んで、容赦ない空爆で命を奪ったあの行為は「力による原状変更」以外の何物でもない。 記事全文>>

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町工場の冤罪はなぜ起きた-「経済安保」を語る前に
『山田厚史の地球は丸くない』第206回

2月 11日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

「大川原化工機」という会社(本社・横浜市)で起きた冤罪(えんざい)事件をご存知だろうか。お茶やスープを粉末にする噴霧乾燥機を作っている従業員100人ほどの中小企業。今や食品製造に欠かせない噴霧乾燥装置のトップメーカーで、日本のモノ作りを最前線で支える典型的な町工場である。

この会社が中国に輸出した噴霧乾燥機が「武器転用が可能だ」として社長ら3人が警視庁公安部に2020年3月、外国為替管理法違反容疑で逮捕された。

3人は「武器転用など考えられない」と容疑を否認。そのため保釈が認められず、大川原正明社長(72)と島田順司取締役(68)は330日余、身柄を勾留(こうりゅう)された。

もう1人は、元技術担当の専務で、退職後は富士山麓で妻と暮らしていた顧問の相嶋静夫さん(72)。半年に及ぶ勾留で健康を害し、不調を訴えたが取り合ってもらえず、進行性の胃がんがわかった時はすでに手遅れだった。2021年2月、刑事被告人のまま無念の死を遂げた。

事件はその後、急展開する。3人は2020年3月に起訴されたが、公判は開かれないままだった。ところが21年7月、東京地検は突然、大川原さんと島田さんの「起訴取り消し」を決定。初公判が予定された日の4日前だった。3人を罪人扱いにしてきた検察は、手のひらを返したように、何事もなかったかのようにしてしまった。

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