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半導体産業の復活はあるのか
その3 ラピダス
『視点を磨き、視野を広げる』第79回

11月 19日 2024年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

半導体産業復活に向けて、日本政府が巨額の支援をする複数のプロジェクトが進行中である。その中心に位置づけられるのは、北海道千歳市で2027年に最先端半導体の量産を目指すRapidus(ラピダス)(*注1)である。ラピダスは、民間企業8社(トヨタ、ソニー、NTTなど)が出資して設立されたが、実質的には政府肝煎りの国策会社である。補助金9200億円がすでに決まっているが、追加で4兆円程度の税金投入が必要だとみられる大プロジェクトなのである。

政府支援の大きさからもラピダスへの期待がうかがえ、まさに日本半導体産業復活の象徴となるプロジェクトといえる。しかし、ラピダスには課題が多い。 記事全文>>

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半導体産業の復活はあるのか
その2 日本半導体凋落の原因を雇用システムに見る
『視点を磨き、視野を広げる』第78回

10月 02日 2024年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

前稿では、日本の半導体産業凋落(ちょうらく)の原因を考えた。原因に関しては諸説あるが、湯之上隆(*注1)は、日本の半導体メーカーの「高品質病」に凋落の根本原因を見る。

1980年代に日本のDRAM(*注2)は汎用(はんよう)コンピューター向けの高品質(長寿命)製品を作ることに成功して、半導体売上の世界シェアトップに立った。その後、市場環境の変化(汎用コンピューターからパソコンへの主役交代)があり、低価格で大量供給が可能な製品が求められた。しかし日本メーカーは高品質を止められず(過剰品質)、市場ニーズに合致した製品を作り出せなかった。凋落の直接的原因は、市場変化への不適応であるが、湯之上はさらに不適応の原因を探り、「高品質病」を見いだすのである 記事全文>>

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半導体産業の復活はあるのか
その1 日本半導体凋落の原因
『視点を磨き、視野を広げる』第77回

8月 26日 2024年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープンカレッジに通い始めた。

◆はじめに

日本の半導体産業の復活は可能だろうか。日本は、1980年代には半導体で世界トップの座(ピークの1988年にシェア50.3%)にあった。しかし1990年代以降は低迷して、現在のシェアは10%に満たない。その日本の半導体産業が復活するのでは、という期待が高まっている。政府が巨額の補助金を投入する大プロジェクト――世界最大のファウンドリー(半導体製造会社)TSMC(台湾積体電路製造)による熊本工場建設、最先端半導体の製造を目指す国策会社ラピダス(*注1)の設立など――が動き出したからだ。

こうした政府の動きの背景には、米中対立による地政学リスクの増大という環境変化がある。すなわち政府の半導体戦略は、中国を念頭に置いた経済安全保障の観点から打ち出されたものである。政治に力点を置いた政策と言って良いだろう。2兆円を超える補助金(*注2)が投入されるが、経済面からの検討は十分なのだろうか。 記事全文>>

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「グローバル化」の視点から考える(その3):経常収支
『視点を磨き、視野を広げる』第76回

7月 01日 2024年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

前稿「円安」では、大幅な円安にもかかわらず、貿易収支が赤字を計上している要因として貿易構造の変化――円安でも輸出数量が伸びない――について考えた。

本稿では、貿易収支が赤字になっても経常収支が黒字を維持している理由――経常収支の構造変化――とは何かについて確認する(論点1)。次に、経常収支黒字は今後も維持可能か(論点2)、そして経常収支赤字が意味するもの(論点3)、について考えたい。そして前々稿「インフレ」、前稿「円安」を含めた全体のまとめを行いたい。

なお、本稿では日本企業の為替戦略の研究で知られる経済学者の佐藤清隆(横浜国立大学教授)、為替市場の動きに詳しいエコノミストの唐鎌(からかま)大輔(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)の論考を前稿に引き続き参考とした(巻末書籍参照)。 記事全文>>

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「グローバル化」の視点から考える(その2):円安
『視点を磨き、視野を広げる』第75回

6月 10日 2024年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

ここ数年で日本経済を取り巻く環境は大きく変化した。「アベノミクス」ではデフレと円高が諸悪の根源だとされていた。異次元緩和で円安と株高は実現したが、デフレは退治できなかった。そのデフレが新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的流行)を契機とする海外インフレの波及と円安によって、突然インフレになった。デフレと円高がなくなり、円安は株価を史上最高値に押し上げた。また、政府の音頭取りで賃金も2年連続で大幅に上昇している。政府が唱える「物価と賃金の好循環」が実現するかもしれないと思いたくなるが、それは楽観的すぎるだろう。 記事全文>>

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「グローバル化」の視点から考える
(その1):インフレ
『視点を磨き、視野を広げる』第74回

4月 24日 2024年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープンカレッジに通い始めた。

◆はじめに:「グローバル化」の視点から考える

高校の歴史は、最近まで世界史と日本史の二科目だった。2年前に近現代史だけを括(くく)り出して日本史と世界史を統合した「歴史総合」という新科目が加わった。その新しい教科書(*注1)を成田龍一(東京女子大学名誉教授)が執筆している。わたしにとって成田はオープンカレッジの授業で「総力戦体制論(*注2)」という新しい視点の存在を教えてくれた先生である。近現代史を見る目が広がったことに感謝している。成田が主張する歴史の連続性の重視は、近現代史の一つの流れとなっている。その成田が書いた教科書を使って、近現代史を勉強できる今の高校生は恵まれている。 記事全文>>

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「物価」について考える(その8)
MMTの問題点(3)「政治」
『視点を磨き、視野を広げる』第73回

2月 19日 2024年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

MMT(現代貨幣理論)の問題点の最終稿として、日本の政治がMMTを受け入れられるのかについて考えたい。

まず現在の政治に目をやると、MMTに興味を示しているのが自民党である点が気になる。米国では、MMTの提唱者の一人である経済学者のステファニー・ケルトン(ニューヨーク州立大学教授)が、民主党の上院議員で社会民主主義者を自称するバーニー・サンダースのアドバイザーを務めるように、リベラル色が強い。これに対して日本では主要野党がMMTと距離を置いているのに対し、保守政党である自民党が接近しているというねじれ現象が起きているのである。

自民党には二つの「財政本部」がある。一つは財政健全化を掲げる、岸田総裁直轄の「財政健全化推進本部」、もう一つが積極財政を唱える「財政政策検討本部」である。後者は高市早苗経済安全保障相の下にできたものであり、安倍元首相が最高顧問を務めていた。(*注1) 記事全文>>

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「物価」について考える(その7)
MMTの問題点(2)「外貨」
『視点を磨き、視野を広げる』第72回

12月 20日 2023年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

本稿では、MMT(現代貨幣理論)の何が問題かについての第2回として、「外貨」について考えたい。

MMTの基本命題「通貨主権を有する政府は無制限の支出能力を有する」は、自国通貨に限られる。海外との貿易や投資の決済には、円と「外貨」の交換が必要である。本稿では自国通貨建ての「無制限」の支出能力は、外貨の「制約」によって影響を受けることを明らかにしたい。

日本は外貨獲得能力に優れ、経常収支は黒字を維持しているし、外貨準備は世界第2位、対外純資産は世界第1位である(*注1)。外貨に関して日本は、現在も世界トップクラスの力を有し、それが「円の信認」の基盤となっている。国際的に取引される通貨の中心的な位置を占める基軸通貨は米国ドルであり、「円の信認」維持にはドルを必要とする。この「円の信認」と「ドルの必要性」を切り口として、日本の通貨主権の「制約」について考えたい。 記事全文>>

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「物価」について考える(その6)
MMTの問題点(1)インフレ
『視点を磨き、視野を広げる』第71回

11月 08日 2023年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

今回は、MMT(現代貨幣理論)の問題点について考えたい。前稿で見たようにMMTは信用貨幣論・内生説によって主流派経済学の商品貨幣論・外生説を批判する。外生説は――日銀はマネタリーベース(現金+日銀当座預金)の供給を操作することでマネーストック(通貨総量)を制御できる――と考える。ただし、日本はゼロ金利状態が続いて金融政策が有効性を失う「流動性の罠(わな)」に陥っている可能性がある。そこで、日銀がインフレ目標(2%)を明示し、達成を公約して大量に資金を供給すれば(=「予想に働きかける政策」)、目標を達成できると考えたのである。こうして異次元緩和が実施された。 記事全文>>

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「物価」について考える(その5)
MMTをどう考えるべきか(1)
『視点を磨き、視野を広げる』第70回

9月 11日 2023年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

今回はMMT(現代貨幣理論)について考えたい。日本の財政の現状――財政赤字と国債の大量発行が常態化していても、低金利が続き財政が破綻(はたん)しないのはなぜか――について主流派経済学は納得がいく説明ができているとは思えない。一方、MMTは独自の貨幣論に基づく論理的整合性をもった解釈を示すが、それは主流派経済学の常識と相いれない。

経済学者の見解が真っ向から対立している状況を、専門家ではないわたしたちはどう考えれば良いのだろうか。そのヒントを得るために、本稿では主流派経済学とMMTの貨幣観――貨幣の起源論争とそこから導かれる貨幣理解――の違いから考えていきたい。 記事全文>>

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