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「リベラル能力主義」について考える(その2)
『視点を磨き、視野を広げる』第59回

5月 09日 2022年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに―リベラル能力主義が持つ問題

・リベラル能力資本主義

米国の経済学者ブランコ・ミラノヴィッチは、その著書『資本主義だけ残った―世界を制する資本主義の未来』において、米国型の資本主義を「リベラル能力資本主義」と呼んでいる。

―「リベラル」は、すべての人に機会の平等が保証されるべきという考え方だ。「能力(主義)」は、誰もが能力と努力によって評価されることをいう。したがって機会の平等が必要だ。両者は基本的な価値観(法の支配、人権、民主主義)のもとで一つのシステムとして機能し、能力主義的平等を求める。

―「資本主義」は、グローバル市場の中で活動する市場志向の資本主義である。テクノロジーを武器に市場システムの中での効率性(生産性)の追求を特徴とする。したがって理性主義的なリベラル能力主義と相性が良い。 記事全文>>

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「リベラル能力主義」について考える(その1)
『視点を磨き、視野を広げる』第58回

3月 21日 2022年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに:本稿のねらい

米中対立が続き、ロシアがウクライナに侵攻した。新しい冷戦の始まりという捉え方は現実感を増している。地政学的に見れば、覇権国米国の衰えは隠せず、中国の台頭による国際秩序の変化は明らかだ。また、経済においても、ベルリンの壁崩壊以降約30年続いたグローバリゼーション(グローバル化)の時代が転換期を迎えている。

こうした「変化」は、グローバル化を支えるイデオロギーである新自由主義の退潮をもたらしている。2021年10月に発足した岸田政権が「新しい資本主義」を掲げて新自由主義からの転換を打ち出しているのは、それを象徴している。政権が掲げる「成長と分配の好循環」によって格差の縮小が進むことを期待したいが、前稿で米国の経済学者ブランコ・ミラノヴィッチ(ニューヨーク市立大学大学院客員教授)の『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』を読んで、「格差」の問題は「分配」だけでは解決できないという思いを強くした。今回はその続きを考えてみたい。 記事全文>>

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「地政学」について考える(その6)-米中対立
『視点を磨き、視野を広げる』第57回

1月 12日 2022年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

はじめに:グローバル資本主義

今回は、米中対立の背景としてのグローバル資本主義について考えたい。グローバル資本主義とは、ヒト・モノ・カネの国境を超えた自由な移動による効率性向上で収益を追求する現代の資本主義システムを表す言葉である。前稿では、格差研究で知られる米国の経済学者ブランコ・ミラノヴィッチ(ニューヨーク市立大学大学院客員教授)著『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』を参考にして、米国=リベラル能力資本主義、中国=政治的資本主義という特徴を比較した。ただし本書では、米中対立を「民主主義対専制主義」のように対立的に捉えるのではなく、資本主義システムとしての同質性に注目した考察がなされている。そうした両国を結びつけているのは、グローバリゼーション(グローバル化)である。そこで本稿では、本書が提示する三つの視点――エレファントカーブ、アンバンドリング、移民と腐敗――からグローバル化を捉えることで、グローバル資本主義の光と陰が米中関係に与える影響について考えてみたい。

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「地政学」について考える(その5)-米中対立(3)
『視点を磨き、視野を広げる』第56回

12月 01日 2021年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

はじめに

中国共産党は今年11月の中央委員会第6回全体会議(6中全会)において「歴史決議」を採択し、日本経済新聞は一面トップで「社会主義回帰、資本主義と再び対峙」と見出しをつけた。米中対立は、資本主義対社会主義の対立の構図という理解は正しいのだろうか。

前稿では国際政治学者・佐橋亨(東京大学准教授)の『米中対立』を読んだ。佐橋は――米中対立は相互不信が根底にあるため長期化する――と見る。この見解に納得しつつも、対立の背景にグローバル資本主義を重ねることによって、事象をより構造的に理解できるのではないかと考えた。すなわち――米ソ冷戦の終焉(しゅうえん)を資本主義と民主主義の勝利だと信じた米国は、それを世界に拡大するためにグローバル化を牽引(けんいん)し、巨大市場を持つ中国をW T O(世界貿易機関)に招き入れた。中国は、グローバル資本主義への参加によって経済力を飛躍的に高めることで富国だけでなく強兵も実現した。米国は、中国が経済発展に伴い民主化を進めて米国が主導するリベラルな国際秩序に従うことを期待したが、それは裏切られた。不信感を強めた米国は、中国の軍事的伸張に危機感を募らせて対中強硬策に転じ、それに中国が反発して相互不信に陥り、対立が激化した――。

しかしながら、この理解は「中国とは何か」という考察が十分ではないことに留意しなければならないと考えている。そこで今回は、中国への視点を持った本として米国の経済学者ブランコミラノヴィッチ『資本主義だけ残った』を取り上げたい。

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「地政学」について考える(その4)-米中対立
『視点を磨き、視野を広げる』第55回

10月 21日 2021年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

はじめに

米中対立の行方と日本の選択について考えたい。前稿では国際政治学者の佐橋亮著『米中対立――アメリカの戦略転換と分断される世界』を参考にしたが、佐橋は米中国交回復後の過去40年間の米中関係は、米国が主導し中国は受動的であったとする。要約すれば――国交回復後の米国は中国の発展を支援した(「関与と支援」)。その背景には中国への三つの期待(市場化改革、政治改革、国際秩序への貢献)があった。しかし、期待は裏切られ、経済成長を続けた中国は経済力、軍事力で米国に対抗しうる超大国となった。この状況に不信と危機感を抱いた米国は長年の関与政策からの転換を図り、それに反発する中国と対立するに至った――となる。

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「地政学」について考える(その3)ー米中対立(1)
『視点を磨き、視野を広げる』第54回

9月 21日 2021年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに――米中新冷戦

今回は米中対立を地政学的な視点から考えてみたい。地政学が示すのは、覇権国に対して新興の大国が挑戦すると最終的に戦争に至るという歴史上の教訓だ。現在の覇権国米国と新興国中国の対立の構図は同じである。であれば中国は「第1次世界大戦前のドイツ」になるのだろうか。いや、核兵器がある現代においては、大規模な戦争は両国、さらに言えば全世界の破滅につながる。両国はそれを自制する分別をもっているはずである。したがって東西の覇権国がにらみ合った米ソ冷戦のような状態が続くと見て、現在の米中対立を「米中新冷戦」だとする捉え方が一般的である。

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「地政学」について考える(その2)
『視点を磨き、視野を広げる』第53回

8月 30日 2021年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに――地政学と経済学の総合

地政学とは、地理と歴史で世界を理解することである。前稿で取り上げた『新しい地政学』は、過去の教訓の集積である「古典的地政学」の上に「新しい」国際環境――グローバル化以降の世界――における地政学戦略の構想を示している。「新しい」というのは、陸海空に加えて宇宙やサイバー空間にまで対象が広がったことを指すが、それはまた、「法の支配」に基づいたリベラルな国際秩序の確立を構想している――「自由で開かれたインド太平洋」(*注1)など――からである。同書は、北岡伸一(国際協力機構理事長)、細谷雄一(慶応大学教授)が編者となっており、主流派の地政学と呼んでよいだろう。

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「地政学」について考える(その1)
『視点を磨き、視野を広げる』第52回

7月 07日 2021年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに――国は引っ越しできない

「自由で開かれたインド太平洋」という日本発の外交構想がある。2016年に当時の安倍首相(第2次)が提唱したもので、米国をはじめ国際的な支持の広がりが見られ、日本外交の成果とされる。中国の海洋進出を念頭に置いたものであり、日本の外交戦略に地政学的視点が導入された例として知られる。

近年、国際的な緊張の高まりを背景に、地政学の「復活」が言われている。そこで、今回は地政学をテーマにしたい。地政学の説明で一番気に入っているのは――人は引っ越しできるが、国は引っ越しできないので地理的条件で国際関係を考えること(*注1)――というものだ。日本は米中ロの間に位置し、友好的な隣国はないという厳しい環境におかれている現実を直視した、地政学的思考が求められているのである。

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「MMTを考える」その6(完)
『視点を磨き、視野を広げる』第51回

4月 26日 2021年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

新型コロナ禍で、失業や収入減少に苦しむ人々が増えている。その一方で、金融緩和による株の上昇で富裕層はいっそう豊かになっている。格差は新型コロナ禍前からあったが、より深刻化していると思われる。格差拡大は世界的な問題であるが、その傾向が止まらず、許容しがたい水準に達すれば社会が不安定化する。そうした懸念を反映して、現在の状況を、格差が拡大して戦争に向かった1930年代に酷似するといった見方がある。米中の対立激化がもたらす緊張の高まりは、そうした懸念に拍車をかける。

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「MMTを考える」(その5)
『視点を磨き、視野を広げる』第50回

3月 30日 2021年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

◆はじめに

今回は、グローバル化をテーマとしたい。中野剛志の『富国と強兵』を読みながらMMT(現代貨幣理論)を考えてきたが、世界的な反グローバル化、反緊縮の動きの中で、財政政策を中心とするケインズ経済学の復権が見られ、その一つの象徴的な問題提起が、MMTだからである。したがってMMTはグローバル化に批判的な立場である。その理由を見ることで、自由貿易、グローバル化の何が問題なのかを考えたい。 記事全文>>

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