古川弘介(ふるかわ・こうすけ)
海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。
◆ はじめに
新型コロナ禍によって、国家を意識することが増えた気がする。理由は二つ考えられる。一つは、グローバル化の進展で勢いを増すヒト・モノ・カネの流れの中で、垣根が低くなっていくばかりと思われた国境の復権に象徴される領域国家としての存在感の高まりである。EU(欧州連合)域内での移動制限や国家間のワクチン争奪戦を見ていると、その思いを強くする。もう一つが、新型コロナ対策で国民の自由や私権を制限する一方で、生活を保障する強大な権力――国家の怖さとありがたさ――を実感したためである。特に、欧米諸国での政府の対応の「厳しさ」と日本の「緩(ゆる)さ」とのギャップを再認識したことは、(日本という)国家のあり方を考える良い機会となった。 記事全文>>