東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、前回第63回に引き続きタイのイミグレーション(入国管理局)でのビザ、ワークパーミット(WP、労働許可証)に関するトラブルについてご紹介します。本稿第59回「ワークパーミットの法改正」でも取り上げた、駐在員事務所の所長のワークパーミットに関するトラブルの事例です。
第59回でご紹介した通り、外国人就労管理に関する緊急勅令により、タイで働く駐在員事務所の所長はワークパーミットの取得が不要になったとお伝えしていました。ところが、最近になって、不要になったと聞いていたはずのワークミットの取得を迫られたというご相談がありました。
ややこしいことに、現状では日系の駐在員事務所の所長のうち、ワークパーミットの取得が必要な場合と、不要な場合があります。
混乱の元となるのは、2017年6月に施行された外国人事業法の改正により、そもそも駐在員事務所の設立時期によって、商務省へのライセンスの申請があるのか、ないのかで「外国人事業証明書を取得している場合」と「取得していない場合」の以下の二つのケースがあることです。
(1)改正前に商務省に対して事業ライセンスの申請をして駐在員事務所を設立したケース
「トー3書式」という外国人事業許可証を持っています。「ライセンス申請」なので申請内容に対する審査があり、審査に通過すると、トー3が発行されます。かつては設立まで3~6カ月を要していました。
(2)改正後、商務省への事業ライセンス申請が不要となり、必要書類の提出のみで駐在員事務所を設立したケース
必要書類の確認のみで、最速で即日認可されます。ライセンスという概念ではないため、トー3は発行されません。
2018年3月の緊急勅令で、これら二つのケースとも所長についてはワークパーミットが不要となり、すでに持っている所長の場合も、更新時にワークパーミットは発行されなくなりました。外国人事業法の改正後に設立された駐在員事務所についても、所長はビザのみとなっていました。
ところが、今年1月の通達によって、ワークパーミットが不要なのは(1)のケースだけで、(2)のケースでは所長はワークパーミットが必要との運用に変更されました。したがって(2)に該当する駐在員事務所の所長のうち、現在ワークパーミットを持っていない場合は、新たにワークパーミットの取得申請が必要となります。
結論として、駐在員事務所の所長のうちワークパーミットが不要なのは、2017年6月に施行された外国人事業法の改正前に商務省にライセンス申請をした上で設立された駐在員事務所の所長に限定され、改正後に設立された駐在員事務所の所長はその対象外、というのが正しい解釈です。
同様のケースでお困りの際は、一度弊社にご相談ください。
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