東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、タイ人従業員の病欠に関するA社からのご相談について紹介します。従業員のBが「病気」を理由に頻繁に欠勤を繰り返し、持ち場の同僚に迷惑をかけているのですが、仮病だと思われ、なんとかできないだろうか、というご相談です。場合によっては、解雇を検討したいとのことです。
タイでは、病気休暇は労働者保護法によって労働者の権利として認められています。A社によると、Bは事前に休暇申請を行い、かつ休暇の都度、診断書を提出しているため、会社のルールにのっとった休暇の取得として、労働法上は問題ないことになります。
今回のケースのように、病気休暇を理由に従業員を解雇する場合、「不当解雇」として労働裁判所に持ち込まれる可能性が高く、不当解雇と判断された場合は、再雇用または補償の上乗せが求められます。なお、解雇補償金+補償の上乗せとなった場合の上乗せ金額は、1年あたり最終賃金1カ月分の追加が目安となり、長期勤労者に対してはより手厚い補償金となる傾向にあります。
◆労働裁判では従業員に有利な判例が多い
このように、労働者への法的保護が手厚いタイでは、従業員の病気休暇を理由とする解雇は労働裁判に発展するリスクが高く、実際の労働裁判でも、比較的短期間で従業員に有利な判決が出ることが多いようです。このような状況では、解雇という強硬手段を取るよりも、従業員に対して病気休暇の取得を思いとどまらせるように働きかけることが重要となります。
具体的には、病気休暇の取得日数を昇給やボーナスの査定に反映させるなど、病気休暇が当事者にどのような影響を及ぼすかを明確化し、理解させることがトラブルの防止につながります。タイ人従業員の病気を理由とする休暇には多くの日系企業が頭を悩ませていますが労働法上、権利として守られているうえに、そもそも本当に休暇を必要とする病気なのか、あるいは、仮病なのかを明らかにすることは大変困難です。
一方で、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う在宅勤務の導入により、これまで頻繁に申請のあったタイ人従業員の傷病休暇の申請がパタリとなくなったとの話を耳にします。病気休暇の大半は、軽度の体調不良(中には仮病のケースがあるかも)であると言えるのかもしれません。こうした人事・労務に関するご相談がございましたら、是非お気軽に弊社へお問い合わせください。
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