東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
在タイ日系企業のA社は、業績の悪化に伴いタイからの撤退を決断しました。清算にあたって、何度か依頼したにもかかわらず、外注先のB社からインボイスが発行されなかったため、A社の経理担当者は清算用決算書にB社への買掛金を計上しませんでした。また清算人も、B社への債権額と同額を債務弁済に代わる資産として差し入れしませんでした。A社はタイの商務省で解散及び清算人の登記を完了させ、登記後解散の新聞公告を出しました。
公告後、しばらく経ってからA社の解散の新聞公告に気が付いたB社は、A社に対してインボイスを発行しましたが、A社はすでに臨時株主総会を開催し株主への分配の決議をしており、歳入局にも決算用監査報告書を提出していました。幸いB社の請求額があっても債務超過にはなりませんでしたが、A社の株主は清算分配金の減少に納得せず、B社の請求の無効を主張し、双方は対立。その結果、B社は裁判所に提訴するとA社に通告するに至りました。
今回のケースのように、会社の清算時には清算手続きに入る前に自社で債権債務の整理を行う必要があります。そして、会社清算時にはいくつか注意点がありますので、以下に列挙します。
■清算時の注意点
・手続き開始から清算完了までに長時間を要します(2~3年程度を要する場合もあり)
・書類の保管義務は5年間
・債権者訴訟の時効は2年間
・債務超過状態での清算はできません
・債権者及び債務者に対して清算の連絡の徹底をお願います
なお、実務上は会社設立の段階で事前に撤退基準を作成しておくことが重要となります。特にタイ企業との合弁形態での進出の場合は、合弁相手先との合弁契約書に必ず撤退基準を盛り込むことで、将来的に起こりうる合弁会社とのトラブルの泥沼化を回避することができるでしょう。
今回のケースでは最終的に、A社の主要株主である日本本社がB社の請求を認めて和解し、事なきを得ましたが、清算時には会社は債権債務が清算できる状態にあるのか改めて確認が必要です。今回のような清算に関するご相談がございましたら、是非弊社へお問い合わせください。
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