東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、タイでの労働許可証(ワークパーミット=WP)に関するトラブル事例と、その対応についてご紹介します。タイでの役所手続きでは、日本で考えられないような問題が起こることがあります。タイでは法律の変更によって、前日まで有効だった仕組みにいきなり変更されたり、文化的な違いから思いもよらない問題が起きたりすることがあります。以下、実際にあった具体例をご紹介します。
【事例1】タイ投資委員会(BOI)の奨励業種に認定されている企業に勤務している人がビザ(査証)やWPを延長する際、健康診断書の提出が必要な人と不要な人がいたケース
タイでは、BOIの認可を受けると、税制面での優遇やビザ・WPの手続きの簡素化という恩恵があります。BOIの認可を受けた企業やタイ工業団地公社(IEAT)に入居する企業に勤める人はこれまで、ビザ・WPを延長する際には健康診断書の提出は不要でした。
ところが、労働局の2019年8月16日付の発表により、BOI企業やIEAT企業にもビザ・WPの延長の際に健康診断書の提出が必要になりました。そして、同年10月21日ごろに、ビザ・WPの手続きをウェブ上で行うシングルウィンドウのウェブサイトで一転、BOI企業やIEAT企業はビザ・WPの延長の際に健康診断書の提出は不要になると発表されました。
【事例2】同姓同名の人がいて、WP取得の際にトラブルが起きたケース
BOI企業のA社に勤めるBさんが、シングルウィンドウシステムでWPの申請を行ったところ、現在所持しているWPをいったんキャンセルしてから改めて申請するようにとの回答がありました。
Bさんに確認したところ、今回がタイでの初めての勤務で、これまでWPを取得したことはないとの回答でした。ただ、Bさんの夫もタイの別の会社でWPを取得していたため、夫のWPの写しを添えて労働局に説明しました。
ところが労働局は全く聞き入れず、BさんはC社で働くためにすでにWPを取得していると、具体的な会社名まで伝えてきました。Bさんには身に覚えのない会社で、まさに寝耳に水でした。
そこでBさんは、これまでWPを取得したことがないことを証明するために、現在所持しているパスポートのほか、期限が切れた古いパスポートも用意し、改めて労働局に説明しました。その結果、労働局はようやくBさんの主張を受け入れ、BさんはWPを取得することができました。
タイでは、一つの苗字は一つの直系の家族のみが名乗ることになっており、名前が同じ人が存在しても、苗字と名前が同じになることは文化的にないようです。Bさんと同姓同名の人がすでにWPを取得していて、労働局はBさんに虚偽申請の疑いがあるとして、申請を一時的に却下したのではと推測されます。
今回ご紹介した事例のように、タイでの役所手続きは、つい最近までスムーズに通っていたものが急な変更によって問題になったり、想定外のトラブルが起きたりして、対応に苦慮することがあるかと思います。そのような場合は、ぜひ弊社にご相談下さい。
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