п»ї No Data, No Life 『WHAT^』第30回 | ニュース屋台村

No Data, No Life
『WHAT^』第30回

2月 13日 2020年 文化

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

北山善夫の越後妻有アートトリエンナーレ2000の作品

タワーレコード(本店・東京都渋谷区)のキャッチコピー「No Music, No Life」はNoがふたつあるからといって二重否定ではない。坂本龍一のインタビュー記事(※引用1)で「子どもの時からたった1人でピアノを弾いていた」、「僕には他にできることはないんです」という言葉が印象的だった。有名になる前に、身内とごく少数の聴衆の前で演奏していた彼の音楽を思い出した。「No Music, No Life」の音楽家として生きている人たちがいるので、「No Music, No Life」として音楽のある生活を楽しめる。

「No Art, No Life」なアーティストは北山善夫だろう。小学校の廃校に住みながら、学校全体を作品にしてしまった。マッチ箱程度の無数の椅子に天使の羽をつけて、学校中を飛び回らせるとともに、学校にも巨大な羽をつけた。地域の新聞の死亡記事をひたすら切り抜いて、学校の壁面に掲示し、「死者へ、生者へ」という作品とした。

「No Data, No Life」は、「ニュース屋台村」の筆者の別の屋号『住まいのデータを回す』において、ウイルスはデータとして生きていること、認知症を生きる人類がコンピューターと共存・共生・共進化する物語などを発信しているけれども、筆者にとってデータ解析は生計を支える職業というよりも、40年以上昔の新入社員の時から、「彼には他にできることはない」と上司に見抜かれていたおかげだと思う。

「No Law, No Life」は法治国家のキャッチフレーズになるだろうか。技術や社会の変化が急速であるため、全ての国家で法律が陳腐化している。巨大なグローバル企業は多数の法律専門家を雇用して、各国の法律の抜け穴(主に経済的な意味で)を見つけて活用している。EU(欧州連合)は各国の法律専門家が分担・協力することで、法律の生産性がとても高かった。少なくとも筆者の仕事の領域では、新規医療技術の規制や、一般データ保護規則(GDPR)など、米国よりも先行している。英国が離脱することで、EUの法律生産性が低下すれば、法治国家の存亡にかかわるかもしれない。「No Law, No Life」な法律専門家は、新しい地球規模での法律生産性向上を模索してもらいたい。

「No God, No Life」まで定義域を広げると、否定神学(※参考1)になってしまう。社会的分業体制によって職業が与えられて生きる生き方、もしくは公私分離された生き方に未来があるとは思えない。聖職者も例外ではない。近未来の話であれば、この問題への対処には、多元宇宙論(Multiverse、※参考2)のように、定義域だけではなく値域まで実在の可能性を広げる必要はない。デジタル時代の時間感覚を再発見すれば、否定神学にはならない。コンピューターによる株の売買が、新自由主義に変容した個人主義の時間感覚だ。そして歴史は終わったかのように見える。しかし、社会主義のコンピューターが、デジタル化した「歴史」を再発見できれば、職業の定義が急速に多様化して、秒単位の「歴史」の要求にも適応できるだろう。上述の法律生産性向上も、こういった文脈で再考してみたい。

(引用1) 朝日新聞、2020年2月2日朝刊https://digital.asahi.com/articles/ASN1Y4WTYN1WUCVL005.html?ref=weekly_mail_top

(参考1)否定神学
https://ja.wikipedia.org/wiki/否定神学

(参考2)多元宇宙論
『Our Mathematical Universe』Max Tegmark, Hamish Hamilton (2015/2/3)

WHAT^(ホワット・ハットと読んでください)は、何か気になることを、気の向くままに、イメージと文章にしてみます。

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