п»ї ウイルスの数学、デジタル位相の音楽 『WHAT^』第18回 | ニュース屋台村

ウイルスの数学、デジタル位相の音楽
『WHAT^』第18回

7月 16日 2019年 文化

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

『ビジュアル数学全史-人類誕生前から多次元宇宙まで』(クリフォード・ピックオーバー、岩波書店、2017年)は紀元前1億5000万年にさかのぼり、アリの計数能力から物語が始まる。本の画像は、『ウイルス図鑑101』(マリリン・J・ルーシンク、創元社、2018年)からラルストニアファージφRSL1の電子顕微鏡画像を切り出して、合成して作成した。ウイルスは正20面体の構造をもつものが多く、世界で2番目に美しい数式といわれるオイラーの多面体公式を表現しているのだから、間違いなく最古の幾何学者だ。そして数学全史は数学的宇宙仮説「われわれの世界のすべてのものは、あなた自身を含め、純粋に数学的な存在だ」によって締めくくられる。「あなた」を「ウイルス」と読み替えるほうが数学全史にはふさわしいだろう。

坂本龍一の最新作「Black Mirror: Smithereens」を偶然Boseの360度スピーカーで聴いた。デジタル音源の電子音が、空間にただよい、全く新しい音響空間となっていた。坂本龍一がNHKラジオの効果音作成のアルバイトをしていた時のことを記憶している人は少ないかもしれない。その時の電子音はアナログだった。坂本龍一の気持ちは自由になり、NHKアルバイト時代までさかのぼり、武満徹の音楽、とくに東京裁判での効果音と重なる素晴らしく新しい音楽を創造していた。デジタル音響は位相の音楽を作り出したのだろう。位相の音楽は蛍の光かもしれないし、セミの声かもしれないし、ウイルスの生活環かもしれない。ウイルスの生活環が最もデジタル音響にふさわしいと思う。

WHAT^(ホワット・ハットと読んでください)は何か気になることを、気の向くままに、写真と文章にしてみます。それは事件ではなく、生活することを、ささやかなニュースにする試み。

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